『感想』木のヨーロッパ―建築とまち歩きの辞典―

実用書・一般書

著者 太田邦夫
出版 彰国社
出版日 2015年11月10日
254頁

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内容

本書は、著者が木造建築の研究者として半世紀にわたり研鑽を重ねてきたライフワークの結晶。積年にわたるヨーロッパ全土に及ぶ実地踏査や「木造建築研究フォラム」の9次にも及んだ研修旅行などでの見聞が、本書の基底を成している。
建築家でもある著者が案内する「木のヨーロッパ」への旅は、世界遺産級の教会建築から生活感あふれる街なみや素朴な民家にいたる広範な建物を対象として、その実態を詳細に描いた透視図などの図版や数々のカラー写真を配しながら、19か国をまたぐ12のコースで展開されている。
それに加えて、木造建築の分布、植生や気候・風土、民族、言語、宗教など、文化や歴史的背景までを地図上で図解した旅の準備編、そして36か国に及ぶ関係図版を細密に書き起こして収録した資料編や索引などを相互に結んで、学術的資料にまでたどりつける事典としての機能も付与されている。
ヨーロッパを一つの「木の文化」の視点でまとめあげた世界初の楽しい旅行ガイドであると同時に、われわれ人間の生活環境を考えていくうえでの示唆に富んだ貴重な著作でもある。
構成は、1.旅の準備編、2.旅編、3.旅の参考資料編から成り、これを見ていると旅行に行かない人でも「木のヨーロッパ」の魅力に引き込まれていく。

彰国社より引用)

 

感想

図書館で読みました。
手に取ったきっかけ?
そりゃあもちろん、「木組みの町」が出てくるご注文はうs

上記の内容にあるように、この本にはヨーロッパにおける伝統的な木造建築の構造、対応する気候などが豊富な図や写真と共に紹介されており、建築本としてだけでなく観光本としても十二分に楽しめる良本です。

やはりヨーロッパにも伝統的な軸組木造建築が多くあるらしく、材を上手く加工して繋げたりするのは日本とあまり変わりません。
『軸組工法は日本独自の工法』なんてことを書いている建築会社とかもあるようですが、大嘘でしょうね。

壁の作り方も色々ありますが、日本にはないものとしては「木枠のようなものの内側に石を詰める」など、石が多く使われていることがありますね。
でももちろん木の板を貼っていったり、土壁のような塗り壁もあるようです。

『ヨーロッパは日本に比べて雨が少ない』という考えを持つ日本人は多いかと思いますが、それは正解であり、不正解でもあります。
実際は日本国内のように、ヨーロッパも広いんですから多くの海と山により各地で気候が異なっており、その気候に合うように屋根の勾配や材料なんかも決定されていくようです。
巷では『枠組壁工法は日本の気候に合わない』という人もいますが、日本だって広いんだから合うところと合わないところがあるんじゃないかと思いますがね。

北方ヨーロッパの木造建築でも、日本の古民家のように柱を外側に見せる真壁構造が存在し、壁の部分は漆喰や煉瓦などによって埋められていくものがあります。
このような「真壁」と漆喰などの「白塗り」は日本人にも親しみやすいものだと思います。

 

帰宅してから、英語のwikipediaの「timber framing」とか「Mortise and tenon」とかのページを読んでみたら、欧米の木造軸組み事情が少しわかって面白かったです。
筋交いは欧米のやり方で、貫はアジアのやり方らしいです。
ほぞや仕口も日本のようにちゃんと作って、木材と木材を繋げていたようですね。
(流石に全部は読めてないよ!)

日本はどうして軸組工法で建築しているだけで「俺たちこそが木造建築のナンバーワンだ!」とドヤ顔するのでしょうかね。
枠組壁工法が急速に普及していった理由や、現代の欧米の木造軸組工法の事情など、現代でも海外に学ぶべきことはいっぱいあると思う。
というか最近の日本は自虐史観の反動からか「日本すごい!」と思い過ぎて、他国から技術や考えを学ぶということを忘れつつあるんじゃないかとこの本を読んで思ってしまいましたよ。

 

面白い本なので買っておこうかな~と思って値段を見ると、定価10,000円(税抜)
…いつかアメリカとかのDIY木造建築本とかも取り寄せたりして読んでみようかな。

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