DASH村開拓記

エッセイ・ドキュメンタリー

開拓初期の2000年から2002年までのDASH村

DASH村とは『ザ!鉄腕!DASH!!』のコーナーの一つとなっていた舞台です。
当初は「日本地図にDASHの文字を載せる」ことを目的として開拓を行っていましたが、多種多様な自給自足生活を行って古き良き山村を再現する企画と変わっていきました。
テレビ番組内で開拓を行っていくものとしては元祖のようで、田舎暮らし希望者にもそうでない人にも認知度の高い人気コーナーです。
しかしDASH村は2011年に起こった福島第一原発の爆発のおかげで住めなくなっており、以降はそのコーナーも中止となっているのが現状です…

この本はDASH村が始まった2000年から、2002年までの開拓記録をほぼフルカラーで残したものです。
村の美しい風景や当時は若かったTOKIOの作業風景が映されており、一般的な田舎暮らしエッセイなどよりも状況が分かりやすくて読んでいて心地が良いです。

2000年に土地探しを始めていますが、城島と山口が全国各地の不動産屋や役場を周った結果、山口は約40haで賃料月5万円の物件を、城島は約4haの賃料月28,000円の物件を見つけています
ネット投票の結果、城島が見つけた物件をDASH村の建設地と決めて、8月に入植を始めています。田舎暮らし物件を昔よりも探しやすくなったであろう現在から見ても、城島と山口が見つけてきた物件は素晴らしすぎです。
どうやってこんなに安い物件を探し当てたのでしょうか?
そこらへんのノウハウも公開してほしいものです。

2002年から2011年にもDASH村では多くの作業をしておりますが、2000年から2002年には古民家の移築や耕作放棄地の開墾、ため池づくり、水車小屋の作成、八木橋・北登・アイガモの導入など、DASH村開拓の真髄が集まっています。

2002年から2011年の間の作業状況に関しての本は出版されていませんが、鉄腕ダッシュのウェブサイト内で過去のDASH村の放送内容をいくつか閲覧することが出来ます。
まあでも、やっぱり本で見る方が視覚的に面白いものですので、DASH村に興味のある方はこの本を読んでみることをおススメします。

 

多種多様な作業とDASH村のこころ

野菜を育てるため、最初に土づくりを行っています。
この一番最初の段階から、今は亡き三瓶明雄さんの知恵と技術を借りています。
DASH村の土は粘土質だったため最初は糞と草を混ぜたような堆肥を鋤き込んで通気性を良くし、酸性土質は石灰で中和しています。
その後畝を作って種をまき、野菜づくりがスタートします。
最初の年は種まきが遅れたというのもあって、多くの野菜が霜でやられてしまっていますが…

食料は無農薬で作ることを目指しているので、害虫対策として無農薬農薬を作っています。
このレシピも公式サイトで見ることが出来ますので、有機農法を目指す方は是非閲覧するべきでしょう。

自給自足のために米作りも始まります。
安定した水量と水温の調整のための、バックホウによる5m×6m×深さ4mのため池づくりから開始です。
初年度は多くの病害虫の発生のため、泣く泣く市販の農薬をしていますが、そのかいあってか多くの米の収穫に成功。
脱穀と精米も昔ながらの脱穀機や唐箕、木摺臼、万石どおしを利用しており、まるで民俗資料館のような道具の顔ぶれとなっています。

厳しい冬の寒さを乗り越えるために、炭づくりも1年目から始めています。
炭木の切りだし、土留めをつくり、土羽(外壁)・煙道をつくり、炭木を並べて天井をつくり、火入れの手順となっています。
炭づくりは無事に成功。
炭問屋に買い取りもしてもらったようで、ナラ炭の相場が1俵約1600円のところを1900円の値をつけてもらうこととなっています。

湿気を防ぐ貯蔵小屋も作っており、湿気に強い高床式、壁は落とし板、天井は交互に並べた竹の屋根、動物の侵入を防ぐネズミ返しが付いているという特徴を持っています。
壁を落とし板という全面板張りにすると、夏は湿度が高いので木が膨張して密閉されて湿気の侵入を防ぎ、冬は乾燥するので木が収縮して乾燥した空気が中に入ることになるようです。

DASH村にしてはなかなかの巨大事業ですが、大きな石で作った焚口と、底を鉄板にして浴槽を木板で作った露天風呂づくりも行われています。
1回目の浴槽の板が水圧に耐えられなくて外れてしまったシーンは、DASH村名場面集でもよく登場する傑作シーンです。
2回目は無事に成功しています。

再生した伝統家屋の中にかまども作っています。
土間の土を掘り、赤土と切り藁と塩を混ぜたものをきつく突き固めて基礎を作り、握りこぶし大の石と土を使って壁を作っていき、焚口と鍋掛け口と煙突を作って火入れをすれば完成です。
土に藁や塩を混ぜること、壁には骨として石を使うのは知らなかったので参考になります。

最後にはDASH村で作られた食材を使って、うどんや豆腐の手作りレシピが載っています。
お馴染みの料理は昔だと具体的にどういう風に作られていたのかを知ることが出来ます。

他にも奥が深すぎる日本伝統家屋再生のことについて、DASH村の動植物、水車小屋の製作、ヤギの八木橋と柴犬の北登の生活状況なども、美しい写真と共に残されています。
素朴で優しく時に厳しい多くの先達に教わりながら、DASH村ではたまに失敗しながらも多くのことを成し遂げていっています。
失敗しても諦めない、何でもやってみよう、楽しもうという精神は、田舎暮らしを始めるために必要な条件であり、同時に田舎暮らしを始めると得られるものでもあるかもしれません。

 

最後に、本の最初に載っていた城島茂さんのインタビューを紹介します。
インタビューはもちろん2011年よりも前にされたものですが、おそらくその精神性は今でも変わっていないでしょう。
DASH村はただ昔ながらの生活を行うだけの場ではない、ということが如実に示されている名文です。

「DASH村はどこにあるの?」と必ずきかれる。
そんなとき僕はこう答える。
「DASH村はあなたの心の中にあるんですよ」と。
相手は決まって笑うけれど、本当にそうなのだ。
DASH村はあなたの心の中にこそ存在しているのだ。

 

本の目次

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開拓者のこころ

DASH村開拓記Ⅰ 土の巻

2000 summer
土づくりのしかた
野菜用無農薬農薬のつくり方
2000 autumn
炭窯のつくり方
炭の原木は何がいい?
2001 winter
炭小屋のつくり方
露天風呂のつくり方

DASH村動植物大図鑑

DASH村開拓記Ⅱ 水の巻

2001 spring
苗づくりのしかた
水田のつくり方
2001 summer
DASH米用無農薬農薬のつくり方
日本伝統家屋再生ドキュメント 木組み編
日本伝統家屋再生ドキュメント 茅葺き屋根編
2001 autumn
脱穀と精米のしかた
カマドのつくり方


DASH村開拓記Ⅲ 風の巻

2002 winter
水車のつくり方
2002 spring

DASH村手作りマニュアル

和紙
そば
うどん
漬物・キムチ
納豆
凍みもち
カレー・雑煮・お汁粉
豆腐
湯葉

DASH村新聞

THANKS 僕らの師匠たち

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