小屋のDIY日誌 ツーバイフォー片流れ屋根の垂木とシンプソンハリケーンタイ

2017年1月29日6畳小屋

小屋の片流れ屋根垂木

山の中に広さ6畳、高さ3.6m~2.7mの片流れ屋根、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)の小屋を一人で作ろうとしています。

 

今回の記事は屋根編の初めとして、垂木の加工と取り付けです。
垂木をしっかり固定するため、欠き込みを行い、ハリケーンタイを使いました。

 

前回までの記事で、基礎と床と壁が完成しました。
屋根が完成すれば、構造躯体(度を保つ部分)は全て完成となります。

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(追記)屋根について

屋根の形状は色々な種類があります。
以下の画像が分かりやすいので、載せておきます。

屋根の種類

スタンレー クイック・スクェアマニュアルより

 

セルフビルドや小屋のDIYなどでは、単純な形の「片流れ屋根」と「切妻屋根」が多く採用されています。
家の屋根はよく△に描かれているため、切妻屋根が最も家らしい屋根となるでしょう。

しかし切妻屋根は中央に「棟木」を付けるのが必須で、棟木から壁の上枠や桁に伸びる「垂木」の本数も増えてしまいます。
また、屋根材にも棟からの雨漏りを防ぐための「棟役物」が必要になります。

 

対して、片流れ屋根では一方の壁や桁の高さを高くするだけで作ることが出来、棟木が必要ありません。
そのため、垂木の本数も少なく出来て、棟役物も必要ありません。

しかし片流れ屋根は切妻屋根に比べて水上側(高い側)からの風雨に弱い、というデメリットがあります。
自分が建築する小屋の隣地は別の所有者の山林で木が生い茂っているので、その方向からの風雨は少ないと予想出来ます。
というわけで自分はローコストに建築するため、水上側を山林に向けた「片流れ屋根」にすることにしました。

 

ツーバイフォーの片流れ屋根

垂木の材料と強度

垂木とは、屋根材を乗せるための構造材です。
垂木を使わない木造屋根はほぼ無いと言って良いくらい、屋根には不可欠な部材です。

在来軸組工法では、垂木の基本サイズは45×45mmという細いものです。
その代わりに、910mmスパン毎に垂木を支える「母屋」を設置します。

対して、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)では母屋をあまり使わず、垂木のサイズを大きくすることで長スパンに耐えるのが基本のようです。

 

今回の片流れ屋根6畳小屋でも母屋は使わないので、垂木のスパンが2.7mとなります。
ホームセンターで売られている、安いSPF2×4(38×89mm)で2.7mも飛ばすことが出来るのか?

垂木の断面算定という、面白いページがあったので計算してみました。
屋根は2.87寸勾配、1820×910mm合板を張る予定なのでピッチは455mm。
屋根材は波板を使う予定なので、「薄板鉄板ぶき」です。

屋根が壊れる原因は主に「積雪」ですから、当地の積雪量によってOKかNGとなります。

積雪量を色々と変えてみたところ、40cmまでは耐えられるようでした。
小屋の建築場所は気象庁的には「積雪無し」と分類されるところなので、まあ何とか大丈夫、という結果になりました。

というわけで垂木に使う木材は、ホームセンターに売られているSPF2×4(38×89mm)の12F(3,640mm)に決定です。
単価は、720円程度。

 

ちなみに、2×6(38×140mm)を使えば、スパン2.7mでも積雪2mまで耐えられます。
日本海側や高山など、積雪量の多い地域に小屋を建てたい人は2×6材を使ったほうが安全だと思います。

 

(追記)垂木の欠き込み(バーズマウス)の基本

垂木の傾きは屋根の勾配そのものになりますが、母屋や壁の上枠などの水平材と接合しなければなりません。

在来軸組工法では、垂木と接する母屋や桁に「垂木掘り」を行って、密着させます。
対してツーバイフォー工法では、上枠や棟木を掘るのではなく、垂木そのものに欠き込みを入れるのが基本です。

スタンレー クイック・スクェアマニュアルより

ツーバイフォー工法ではこの欠きこみをバーズマウス(bird’s mouth)と言います。
日本語にはこの部分を規定する言葉は無いようなので、英語で検索したほうが情報が出やすいです。

マニュアルによると、この欠き込みは「測定線まで」のようです。
測定線とは?

 

スタンレーによれば、測定線は差し金の長手側の幅で決定出来るようです。
更に調べてみると、以下の差し金(Square)のことのようでした。

Stanley Carpenters Steel Roofing Square

サイズは、長手600×50mm、妻手400×38mm。

つまり、2×4垂木なら下端から39mmまで、2×6以上の垂木なら下端から50mmまでが欠き込みの最大深さになります。

 

実際にやった欠き込みサイズ、軒の出について

計算の結果、この6畳小屋の勾配は2.87寸勾配(直角三角形で表すと、底辺:高さ=10:2.87)。

欠きこみ幅は上枠幅+外壁幅=90+12=102mmを基準としました。
欠きこみ垂直深さは、10:2.87=102:X X=29mm。

 

北面上枠と南面上枠までの長さは、斜辺で3,071mmです。
軒の出も含めた屋根の総斜辺長さは、合板の大きさに合わせた3,640mmとします。
というわけで軒の出の合計長さは3,640-3,071=569mmとなります。

問題は、その配分です。
将来的には南北面両方に大きな庇やカーポートのようなものを作るつもりですが、やはりある程度の長さの軒の出は必要です。
軒の出の長さで風雨に対する強さも変わってきます。
片流れ屋根なので水上側と水下側があり、水上側は風雨が入り込みやすくなります。
というわけで、水上の北側を400mm、水下の南側は169mmの軒の出とし、風雨に対する耐久力のバランスを同じにしようとしました。

垂木の加工を始めます。

軒の出の長さが決まったので、102×29mmで欠きこみしました。
さしがねで直角の線を引いて、丸ノコと鋸で切断。

ちなみに垂木両端の垂直カットはしませんでした。
面倒くさくて…

 


壁の垂直・傾きに注意

早速1本加工して取り付けてみます。
ちょっと隙間があります。

アイエエエ!?ナンデ!?

のんびり休憩しながら小屋を見ていたら、気づきました。

側面上部壁パネルをまだ取り付けていないから、壁パネルが内側から外側に傾いているんだ!

早速ロープをかけて、トラッカーズヒッチ(動滑車作る結び)で壁パネルを内側に引っ張ります。
荷重をかけると内側に傾いてきました。
外側に傾いていたから、垂木の欠き込みに隙間があったんだ!

垂木を設置してみると、上枠と垂木の欠きこみ幅がほぼぴったりに合いました。

あぶねえあぶねえ、傾きの修正をしないまま固定していたら面倒なことになりそうでしたよ。

 

シンプソン金具・ハリケーンタイで垂木を取り付け

垂木の欠き込みを行えばビスや釘の斜め打ちでもしっかり固定出来ますが、更なる強度向上のため、垂木用の金具を使いました。

『ひねり金物』を試しに使ってみるが…

ひねり金物は、在来軸組工法で垂木を固定するために使う金具です。
ツーバイフォー工法でも使えるのかな?と思って、ホームセンターで安く売られてたので購入してみました。

色々と材料の向きを変えて試してみましたが、ひねり部分が干渉して密着させられない…
上枠が、ツーバイ材2本分の厚さとかなら取り付けられたかもしれません。
しかし今回は上枠は1本(38mm厚)だけ。

綺麗に密着させるため、ツーバイフォー工法で多く使用されている「シンプソン金具」を使うことにしました。

 

シンプソン金具・ハリケーンタイについて

アメリカのツーバイフォー工法で多く使われる金物が、「シンプソン金具」です。
強度があり、表面が溶融亜鉛メッキされているから錆びにくく、ツーバイ材に合うようなサイズとなっています。
流通量が多いため、日本でも安価に手に入れやすいです。

というわけで、自分も積極的に使用することにしました。
国産金具にも同じようなものがあるので、近くのホームセンターに売られているものを使えば良いと思いますよ。

垂木を繋げる金物は、ハリケーンタイというものです。
日本の台風よりも強い、ハリケーンにも耐えるためのあおり止め金具です。

ハリケーンタイにはH1,H2,H3,H4があります。
上枠厚さが1本だけの2インチ(38mm)の場合、使えるのはH3とH4のみとなります。
というわけで、自分もH3とH4を使ってみました。

金具はビスや釘で留めていくことになりますが、実験してみたところ、径4.2mmのビスでは入りませんでした。
径3.3mmのスリムビスなら使えました。
なので、ツーバイ材の厚さ(38mm)を超えないように、スリムビス35mmで留めていきました。

 

ハリケーンタイH3とH4の取り付け

どう取り付けるか試行錯誤中。

垂木下側に、H3を取り付けるのは不可能のようです…。

H4だと、垂木下側にも取り付けられるようです。

垂木上側なら、H3でもH4でも難なく取り付けられるようです。

 

一番端は、壁パネル上枠を伸ばした先に取り付けました。
この方法に関しては、地球生活NEOさんを参考にさせていただきました。

基本的に外側に倒れないようにするストッパーみたいな材は取り付けないので、ハリケーンタイでちゃんと固定しておきます。
ハリケーンタイH3とH4には左右(R,L)がありますが、端の固定ではちゃんと左右それぞれ必要になります。

 

2016年12月2日ハリケーンタイでの垂木の固定完了!

横幅4,550mm、ピッチ455mmなので、使用した垂木は11本。
しかし、けらば(勾配側面側)の補強があるので、その内2本は別の構造です。
詳しくは次の記事で。

9本の垂木は同じ大きさの欠き込み(bird’s mouth)をして、ハリケーンタイで固定していくだけだから作業は簡単…
なのですが、垂木設置位置が間違えていないか何度も確認していたのでちょっと時間かかりました。
ちゃんと垂木が真北・真南を向いているか心配です。

 

 

これにて屋根の基本材、垂木が完成です。
次回はけらばの補強と、野地合板張りです。

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