新白河原人

エッセイ・ドキュメンタリー

漫画家が自力で山林を開拓し、家を建てる

この本は当時47歳の漫画家、守村大さんが一念発起して福島県新白河の山林4haを約600万円で購入し、ほとんど彼一人で開拓していく様子が書かれています。やはり本業が漫画家なので、ページの半分は作業内容や状況が分かりやすいイラストになっており、読みやすくなっています。

ずっと人が立ち入っていないような山林だったので、刈り払い機や鎌を使って1万坪ほど下刈りを行っています。
小屋の建築のためには樹木の伐採や整地も行う必要がありますが、何とこの作業も著者一人で行っています。
チェーンソーなどの道具で伐採し、90万円で購入したバックホウで抜根や整地までやっています。
漫画家以外の仕事なんかやったことないらしいのに、いきなりここまでやってしまうだなんて…尊敬します。

ログハウスのセルフビルドもほとんど一人でやり遂げています。
基礎は防腐処理した栗の丸太を使った独立基礎、水平出しはホースとバケツを利用した水盛り法。
原木杉丸太は木材市場を介して購入し、只管皮を剥いて加工。

ログハウスはノッチとスクライブという方法(?)で凹型に切れ込みをいれて積み上げていくことで作られるようです。
この本のメインはこのログハウスづくりのようで、ちょっとした専門書くらいに詳しく説明されており、ログハウス初心者の人でも何となくメカニズムや作業内容が分かってくると思います。
ログハウスは重い丸太を積み上げるため、人力だけではかなり難しいらしく、この本ではバックホウを最大限に利用して高さ3.5mの11段目まで積んだようです。
壁組みが終わったら屋根を作り、扉や窓を仕上げ、内装工事して建築の完了。

建築材料費は、丸太80万、屋根材代20万、ガラス代4万、足場代16万で合計120万円かかっています。
工具代や燃料代は計上されていませんが、この材料費で16畳のログハウスを建てられたのには感服いたします。

また、この小屋建築によって、当初体重80kg体脂肪率30%の身体は、体重58kg体脂肪率15%にまで減量。
力強い男の身体になっているところにも尊敬いたします。

 

自給自足と趣味を満喫

ログハウス作りが終わってからは、その山林での暮らしぶりが描かれていきます。

ホームセンターで2万円ほどの材料を買って、二棟の鶏小屋を作り、鶏を飼育しています。
おかげで毎日8個の卵が手に入り、古くなった鶏は〆て肉も得られるようです。

調理場としてかまども製作していますが、何回作っても壊れるのでセメントを混ぜたら簡単に出来たようです。

水の自給を行うために井戸掘りも行っていますが、流石にこの作業は業者にやってもらっています。
費用単価は2万円/mらしく、飼っていた犬に位置を決めてもらって掘ってみると、深さ40mで無事に湧出。

他の田舎暮らしエッセイなどにはほとんど無いでしょうが、この本では何と趣味が高じてサウナを自力で作っています。
ログハウス建築技術を利用して約4畳の小屋を作り、薪ストーブで小屋を温めることでサウナとしています。
サウナ小屋の外には水風呂も作っており、こだわりが見えます。

木戸川での鮭調査捕獲にも参加し、不漁ながらもなんとか持ち帰りに成功し、スモークサーモンづくりにも挑戦しています。
燻製ってやはり煙の温度が大事らしく、高すぎると煮えてしまうし低すぎても駄目なようです。
その温度調整には焚口と燻製箱の間に伸縮するアルミダクトを用いており、個人的には初めて知る技術だったので感心しました。

 

他にも家庭菜園の様子やきのこの採集、飼っている犬の様子など様々な項目があって幅広いので、自給自足的田舎暮らしで色んなことをしたい人にはおススメの本です。
イラストが多いので単純に読みやすいしね!

 

本の目次

まえがき

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アウストラロピテクス期:下刈り~整地

ピテカントロプス期:丸太小屋をつくる


ネアンデルタール期:鶏飼育、家庭菜園、犬のことなど

クロマニョン期:サウナづくり、スモークサーモンづくり

あとがき

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