『感想』奇跡のリンゴ

エッセイ・ドキュメンタリー

著 者 石川拓治
出版社 幻冬舎
出版日 2008年7月23日
207頁

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内容

絶対に不可能といわれてきたリンゴの無農薬栽培を成し遂げ、ニュートンよりライト兄弟より偉大な発見をした男の感動ノンフィクション。長年の極貧生活と孤立を乗り越えて辿り着いた答えとは?

幻冬舎より引用)

 

感想

中古本屋で購入して読みました。

不可能とされていた、現代品種のリンゴでの無農薬・無肥料栽培に挑んだ、青森県の木村秋則さんの記録です。

無農薬・無肥料と言えば福岡正信さんの「自然農法」ですが、木村さんはその農法から着想を得て、リンゴでやってみようとしたのです

 

本文中で説明されていますが、かつてのリンゴって今の物よりも小さくて甘くなかったようですね。
そんなリンゴをアメリカで品種改良して、甘くて大きな実を付けるようになったのです。
ただデメリットとして病害虫に弱くなり、肥料と農薬を与えないとまともに育てられなくなったようですが。

自然農法や有機農法と言うとちょっとスピリチュアルな方面に寄りすぎることもありますが、木村さん自体は色々な手法を試していた研究熱心な方だったようですね。

  • 無農薬ではなくまず減農薬を試してみて、収率は下がったが利益率は悪くなかった。
  • イネでの実験では荒い耕起で根張りを良くして収率を増やしてみた
  • 雑草の芽を傷つけて大きくさせない、「早期除草」で手間を減らしてみた
  • 化学農薬ではなく自然農薬(?)で良いものを探してみる。

他の作物で有機農法を試したら成功しても、リンゴではずっと成功しませんでした。
そのリンゴ栽培への苦闘こそがこの本のメインです。

 

結局はリンゴ園の環境を山林の状態・自然な状態に近づけることで病害虫の蔓延を防ぐことが出来たのですが、でもこれって福岡さんの自然農法の一つだったのでは?
木村さんも福岡さんの本は読んだはずなのに、自殺寸前まで試さなかったのは何故だろう?とちょっと疑問に思う。

でもやっぱり木村さんは工夫の人ですから、自然農法だけで改良を終えたわけではなく、例えば以下のような省労力・高品質作物生産の手法を作られたのは、凄いと思います。

  • 秋に一度草刈りを行い、リンゴの色付きを良くする
  • リンゴの木にリンゴ発酵液を入れたバケツをぶら下げて害虫のトラップにし、除虫手間を少なくする
  • 根の張り方と葉脈に合わせた剪定を行う

「無農薬栽培果樹園と農薬散布栽培果樹園が隣接している時、害虫は無農薬栽培果樹園に逃げ込んでくる」
という事例もあったようです。

農家

農薬を撒かないと地域に病害虫が増える!
他人の迷惑を考えないのか!

有機農法されている方が周りの農家の人からこんなことを言われることもあるようですが、病気はまだしも害虫は周辺に害を及ぼしたりはしないのではないか?
農薬を撒かず、野生種や雑草を生やして超粗放管理とする「犠牲区画」を設けてみるってのはどうなんでしょうか?
自分が知らないだけかもしれませんが、こういう農法もあるのだろうか?

 

 

本の全体的な感想としては、ちょっと物語性に寄りすぎかなと思いました。
もちろんそのおかげで楽しく一気に読破出来たのですが、個人的にはもうちょい農業寄りでも良かったかな。
まあ農業に全く興味無い人にも読んでもらうのがこの本のコンセプトであるならば、物語を強調するのは商業的には何の間違いでもなかったでしょう。

物語性を重視したからなのかどうか、ネット上ではこの本への批判が多くあり、読破後に私も色々な記事を読んでみました。
正直言ってほとんどは、ただの仮説でしかないことで断定するものばかり。

 

無農薬で育てると植物が農薬のような成分を蓄積することもある。
その成分は人体に危険な可能性がある。
奇跡のリンゴもそうだろう。
奇跡のリンゴは危険だ!

…いやまあ確かにその可能性があるのはわかりますが、成分分析などで証明しないと断定出来るわけ無いだろうに。
玉ねぎの硫化アリルやアボガドのペルシンのように、ヒトには効きにくい毒だってありますし。
…そういう意味では農薬の危険性の有る無しと変わりません。
ていうか私は反農薬論者ではございません。

ただ、ごくわずかの記事は共感できるものでした。

 

無農薬・無肥料でリンゴに一つでも実を付けさせるだけなら誰だって出来る。
問題は、それが農業経営的に成り立つかどうかだ。
小さな実を数個しかつけず、甘いとは限らない、ただの野生種に返った、先祖返りしたようなリンゴで経営できるか?

病害虫に強かったり実が小さかったりするのって、結局本文中でも紹介された「クラブアップル」に似ているんじゃないかなあと私も思います。
木村さんのリンゴが慣行農法で作られたものと同じ、もしくはそれ以上の品質と量を確保できるならまさしく「奇跡」なのですが、まだそのレベルには至っては無いようです。

でも個人的には同じようなリンゴばかり食べるよりも、同じリンゴでも特徴が色々あるようなものを食べてみたいと思いますから、木村さんのリンゴだって「木村さんのリンゴ」として価値があるのでしょう。

 

まあ何にせよ、肥料や農薬が少なく済むならそれで越したことは無いです。
だって、楽だし。

 

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)

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