『感想』持たない幸福論

エッセイ・ドキュメンタリー

著 者 pha
出版社 幻冬舎
出版日 2015年5月27日
189頁

 

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内容

僕はいわゆる「真っ当」な生き方から逃げて楽になった――

もっと自由に、伸び伸びと。
京大卒・日本一有名な"ニート"が提唱するこれからの生き方。

・生きるのがつらそうな人がこんなに多いのはちょっと変だ。
・「正社員にならねば」「結婚しなければ」「子どもを作らねば」「老後に備えなければ」「貯金しなければ」……「こうあらねば」が人を追い詰めている。
・お金があればみんな幸せになるんだろうか?
・いや、お金で解決できるのは、うまく稼げる一部の人だけだろう。
・生きるのが苦しくなったときは、世間の価値観や周りの意見にとらわれずに「自分が何が好きか」という感覚をしっかり持つことが大事だ。
・僕の場合は好きなものはインターネットだった。ずっと嫌々ながら勤めていた会社を辞めて、それ以来八年間定職に就かずふらふらとした生活をしている。
・会社や家族やお金に頼らなくても、仲間や友達や知り合いが多ければわりと豊かに暮らしていけるんじゃないだろうか。
・生きていく上で大事なのは他者との繋がりを保ち続けることや社会の中に自分の居場所を確保すること。
・いわゆる「普通」とされている生き方以外にも、世界には生き方はいくらでもある。
・今はもう終身雇用で何十年も雇われるのを目指す時代でもないし、家庭を持てばその中で何十年もずっと安定が続くと安心できる時代でもない。
・だから、仕事がしんどくなったら数カ月や数年しばらく休んだりとか、元気が出たらまた社会に出て働いたりとか、
一緒に暮らす相手も状況に応じて柔軟に組み替えていったりとか、そういうのを流動的に選べばいい。
・世の中は「三歩進んで二歩戻る」くらいの感じで少しずつしか変わらないけど、確実に少しずつは変わっていく。

幻冬舎より引用)

 

感想

実は今まであまり知らなかったphaさんについて、ちょっと調べています。
「ニート」、「シェアハウス」というようなキーワードで表されていた彼ですが、「田舎暮らし」も始めたようだから参考になるところもあるかなと思って。

この本は図書館で読みました。
人生論のコーナーにありました。
何故か本の中の、上1/4くらいは一切記述がありません。
注釈みたいなものもない。
どういうこっちゃ?

 

この本にはいくらか参考文献もありますが、ほとんどデータなどが登場しないので、著者の考えばかりが書かれています。
つまるところ、読者がphaさんという人間に共感できるか出来ないかが、この本の評価の分かれるところとなるのではないでしょうか。

結論から言うと、意外に自分はphaさんには共感できないタイプだと分かりました。
「そうかぁ?」とか「何を今更」みたいなことを読んでいて思っていました。
何故だろう。
データを示さず定性的な根拠だけで良いならどんな結論でも導くことが出来ると自分は思っていて、この本には著者の生き方を肯定する考え方のみ抜き出しているかのように感じたからかなあ。
「『俺の生き方は100%正しいんだ!』と著者は思いたいのかしら」、なんて邪推してしまうんだ。

 

著者が言うには、人間が生きていくのに大事なことが二つほどあるようです。

・一人で孤立せずに社会や他人との繋がりを持ち続けること
・自分が何を好きか、何をしているときに一番充実や幸せを感じられるかをちゃんと把握すること

ちなみに自分にとって孤立するのは楽だし好き。
繋がりのための繋がりは大嫌いで、人との繋がりは仕事や趣味が一緒だからなどのような結果でしかないと思ってます。
なので自分は上の二つ目には共感するけど、一つ目は二つ目と矛盾する。
繋がりを持たないことが幸せだと感じる人、タイミングだってある!

 

古い価値観が力を持っていて、新しい生き方もまだ力を持っていない。
それが今の日本の生きづらさの正体なんじゃないのか。

というようなことも書いていますが、歴史上いつの時代も何かしら変化していて、価値観も変わり続けていた。
そしてその変換点では新旧の価値観で争いがいつも起こっていたんじゃねえの、と反論したくなります。
江戸から明治になったときだって価値観の大転換が起こっただろうし、戦時中と戦後の価値観は違うだろうし、高度経済成長期前後では農村と都市の生き方だって大きく変わった。
今が特別「生きづらい」と言えるのか?本当に?

 

phaさんは会社で雇われて働くのが嫌とかどうのより、最初の会社で働くことが嫌だと思っていただけな可能性もあるなあとも思う。
別にニートになったのが間違いだとは言いませんが、一つの企業だけで全ての雇用を判断するのもどうかと。
自営業や創業を一切知らない、所謂普通のサラリーマン家庭で育ったからか?
『ニートがプログラミングを覚えて社会復帰する』という言葉自体、雇用されるかニートかしか知らないのかと。
ちょこちょこした小銭稼ぎで年収100万ほどになっているそうですが、私はそういうのも立派な仕事であり、「社会人」だと思いますが。
よもや契約期間定め無しの被雇用者だけが「社会人」というわけではないだろう?

 

 

ちょっとイライラしながら読んでいる時もありましたが、第3章辺りで田舎暮らしについての記述が増えてきてからは素直に読めるようになっていきました。
著者は熊野にある少々ボロい家を格安で借りて、シェアハウス、別荘的なものとして使っているようです。
自分が世界を作っている、何かしていると充実感を感じられたらそれでいい、リアルにしろゲームにしろ。

 

今の自分にとっては、この本の内容は「何を今更」という感じです。
phaさんは多くの本を読んでいるらしいんだから、もう少しヒッピーとかソローとか中世の宗教的な隠者とかインディアンとか、そういうのも交えた思想のまとめ本を書いてほしかったなあと思う。
まあ自分が小学生くらいの時に読んでたら、「こんな生き方あったのか!」と感銘受けてたかもね。

 

居場所を作る、孤立しないことが生きる目的だ、みたいな思想が主旨になっているようだから、根本的にはあまり共感できない本だったかな…。
山林開拓は「居場所を作る」ということに関係があるかと見えても、個人的には何かこう…語弊があるように感じる。

 

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