スモールハウス 3坪で手に入れるシンプルで自由な生き方
目次
・実用書ではなく、半分はドキュメント、半分は筆者のエッセイ
・3坪ほどの小さな家に住み、シンプルライフを送る
・現代の経済第一主義に対抗する、新たな「自由で豊かな」生活
実用書ではなく、半分はドキュメント、半分は筆者のエッセイ
さて、この本には「スモールハウス」というキーワードが存在しますが、スモールハウスの具体的な作成方法が書かれているというわけではありません。
世界各地で作られたスモールハウスの、広さとか機能とか、そこに住んでいる人々の生活などが主に書かれています。
筆者が言うには、「スモールハウスムーブメントはまだ始まったばかり」なようなので、まだまだ黎明期なのでしょう。
というわけで、スモールハウスを作るための「屋根材は何にするか」とか「在来軸組工法でいくか、ツーバイーフォーでいくか」というような建築技術を期待してはいけません。
しかし、この本を読めば、あなたは「こんな生活方法があったのか!!」と驚天動地、目から鱗なことが書かれていると感じるかもしれません。
3坪ほどの小さな家に住み、シンプルライフを送る
著者が推奨するのは、小さめの家(広さの定義はありません)に住み、足るを知るような生活を送るということ。
この本で紹介されているスモールハウス生活者の中には、何と、駐車場1台分ほどの大きさの家で暮らしている人もいます。
しかもその家の下部にはタイヤが付いています…つまり、トレーラーハウスになっているのです。
トレーラーハウスなのに屋根には勾配がついており、遠めで見るとちゃんとした(小さめの)家にしか見えません。
生活の場である家が、自動車1台でどこにでも運べるということは、気に入らない土地ならすぐに引っ越したり出来る自由があるということです。
これなら、お隣さんがジャンキー一家でもすぐに逃げられるね!HAHAHA!
トレーラーハウスとして作られた理由としては他にも、法の網をかいくぐるという意味も有るようです。
アメリカ等の法律には詳しくありませんが、日本でもトレーラーとそうでないものとでは適用される法律や固定資産税等が変わってくるのは想像できるでしょう。
そのような小さな家で無駄なくスペースを利用する、今のところの共通認識としては、ロフトを作ってそこで寝る、ということくらいのようです。
それ以外の施設、台所やトイレなどは、人によって戦略が異なっていることが多いようです。
しかしそれでいいのです。
結局、人間には個性があり、人によって大切にするものや妥協レベルが違います。
その辺を柔軟に考え、自分が大切にするものを再発見しながら自分の家を作っていくことが、楽しいものなのではないでしょうか。
著者も、家の中の物が全て必要であるということは、まさしくその家が「自分の一部」であり、だからこそそこには確かに「自分の精神」が存在する、というようなことを記述しています。
現代の経済第一主義に対抗する、新たな「自由で豊かな」生活
スモールハウスの真逆に位置する「大きな家」というのは、概してその維持や建築に手間と費用がかかります。
本当にその大きさが必要だったのか?その大きさであるべき理由は何だったのか?
そういう、「ちょうど良い広さ、大きさ」という議論や思索がなされないまま家作りが進んできたので、多くの一般人は何千万もの借金と労働の義務が課せられることになったのです。
小さいということは、その分労力や費用が少なくなるだけでなく、その難易度自体も下がってきます。
例えば、明石海峡大橋のような大きなものでは、人間一人が人生全てをかけても作ることは出来ません。
多くの人と費用と、ものすごい難易度の課題をこなさなれければ、大きなものは作れません。
対して、丸木橋ならどうでしょう。このような小さなもののなら人間一人でも簡単に作ることが出来ます。
それと同じことが家にも言えるでしょう。
大きな家は難しいですが、小さな家なら自分一人でも簡単に作ることが出来ます。
住宅メーカーや広告業界、政府などからの「もっと金を使え!金が無いなら借金しろ!」というような暗黙の圧力に屈するのではなく、経済第一主義が何をもたらし、どこに行こうとしているのかをちゃんと考えてみましょう、というようなことがこの本の著者からの問題提起となっているようです。
金を使わないということは、現代社会では何故か「悪」であり、「改善すべき」だとするような風潮がありますが、確かに人類社会の根本に立ち返れば、なぜ「経済こそが正義」となっているのかが私にもわからなくなってきます。
と言っても、スモールハウスこそが経済第一主義に対する反乱の先駆けなどというような大それた使命を帯びている、というような書き方を著者はしていません。
市民的不服従としてソローやガンディーを挙げることはあっても、スモールハウスが反乱のための反乱であっては、市民の支持を集められません。
質素でつつましい市民的な幸せを追い求めるだけで、働きすぎる経済主義の改善と、自然と調和した持続可能な生活を送ることが出来るという、三方良しな生活を著者は提案しているのです。
本の目次
はじめに 「スモール」の本丸を攻める
今、「小さな家」が注目されている
3坪の家がムーブメントの中心
「スモール」の波に乗り遅れている住宅
スモールハウスは日本に最適
第1章 小さくても家らしい家
歴史を動かしたスモールハウス
要らないスペースを引き算したら10平米になった
必要なものは全て揃っている
ミニマムな暮らしはしたいけど
市民的不服従
勾配のある屋根と、陰を落とす庇
量より質を
第2章 物を持たない暮らし
シンプルな生活で、人生の仕切り直し
身軽でストレスのない生活
豊かな社会では個人の物離れが進む
小さな家で過剰な消費活動から距離を置く
自分の管理外にあるサービスをうまく使う
富裕層にも人気がある
生活の為の設備を共有する
第3章 簡単で大胆なエコロジー
身近な生活から革命を起こす
小ささが背中を押してくれる
環境負荷は大きさの問題
小さいことは良いことだ
その答えを生きる
物を買うよりもやるべきことがたくさんある
個人精神主義とエコロジーの調和
第4章 自由を得るのにお金は要らない
生まれも育ちもシンプルライフ
材料費は住宅価格の3割
顔のある家
小さなければ分業する必要はない
ローテクとハイテクで自給自足生活
スモールハウスは経済的
「夢のマイホーム」に向かって突き進む時代は終わり
第5章 誰でも手に入るローカルユートピア
最初は二地域居住から
経済から自由になる
成熟した資本主義社会で個人的なユートピアを作る
試行錯誤でいい
晴耕雨読とはまさにこれなり
「空回り経済」は何を犠牲にしてきたか
独りの時間を大切にする
第6章 質素な生活と高度な思索
最も贅沢な暮らし
感覚を研ぎ澄ますシンプルな生活
会話のために整えられた空間
家と人生とは切り離せない
意図的にシンプルにすることと、自然にシンプルになること
シンプルを極める
世界のシンプルにする
最近のコメント