自分の山の植生と利用方法について 優占樹木編
低~中層木
ヒサカキ(姫榊)
モッコク(サカキ)科
別名ビシャコ、アクシバ(灰汁柴)
樹高4~7m程度、花期は3~4月の常緑広葉樹
目立たないやつですが日本の照葉樹林では非常に数が多く、どこででも見かけます。
薄暗い場所にも伐採跡地にも生えるし、湿気のある場所にも乾燥した場所にも適応。
更に剪定にもよく耐えて、芽を出す力が強い。
おそらく多くの人は知らない樹種かもしれませんが、日本の代表的樹種の中の一つかもしれません。
私の山でも圧倒的優占樹種となっています。
利用方法としては、サカキが手に入りにくい関東以北などでは墓・仏壇への供えとしてヒサカキが代替されることもあるようです。(ただし販売する場合は4~5日要して整えても7000円程度の収入にしかならない場合あり)
また、常緑広葉樹で、生長が遅く、剪定に強いので、生垣などの庭木としても利用。
「灰汁柴(アクシバ)」という別名があり、樹体にアルミニウムを多く含むため、この木の灰がムラサキの根で染める江戸紫やアカネ染めの媒染剤に使われたそうな。
ヒラタケ栽培の原木としてコナラと同程度の成果が得られた研究例もあり。
中国名では「野茶」というらしく、「葉をあぶって炊けば香ばしいヒサカキ茶のできあがりです」だそうな!ヒサカキの葉が発酵していた時に強烈な緑茶の香りがしたのはこのせいか…
色々調べてみましたが、自分が利用する場合は茶葉が無くなった時の代用、ヒラタケ栽培などに利用してみる他は、薪として燃料にするくらいでしょうか。
本当にヒラタケ栽培出来るのか!?
参考ウェブページ
wikipedia、世界の木材・樹木、(ヒ)サカキ生産~定年後の多角的里山利用(pdf)、六甲山系植生電子図鑑
参考文献
福田ら(2008):雑木林の除伐木を利用した簡便な方法によるヒラタケの栽培~雑木林の継続的管理に向けて~,5pp,日本福祉大学健康科学論集,第12巻
リョウブ(令法)
(庭木図鑑様より)
リョウブ科リョウブ属
別名ハタツモリ(旗積り・畑積り・畑つ守)
樹高3~7m程度の落葉広葉樹
平地から温帯域まで広くみられるもので、パイオニア的な傾向が強く、乾いた尾根筋に生えることが多いとか。
樹皮は古くなると鱗片となって剥がれ落ちてまだらになるので、少し見分けやすい。
自分の山では根元から株が分かれてブワーっと生えて樹体の形は歪な、典型的な中低層の広葉樹ってな感じ。
利用方法は、令法飯として葉が救荒食の一つとして食べられる。「令法」は飢饉対策として領主の令法で植えられたことが由来と考えられているとか。若葉をゆでて増量飯にしたりてんぷらにしたり。美味しくも不味くもないらしいですが…。
材は緻密で硬いので材木などにも利用され、良質な木炭としても使える。
7~9月の花期には蜜蜂の蜜源に。
自分の山ににもそこそこ多く生えており結構太いものが多いですが、切り倒して土木用資材としてばかり使っているのが現状。
もう少し樹高低くなるように剪定して若葉採って食べてみようか?
参考ウェブページ
wikipedia、庭木図鑑、宮城環境保全研究所
ネズ(杜松)
ヒノキ科ビャクシン属
別名ネズミサシ(鼠刺)、ムロ(室)、モロノキ、トショウ、ベボウ
最大樹高15m程度までの常緑針葉樹
丘陵地、岩場、山地の尾根など、日当たりが良くて乾燥した場所に自生。生息適地がアカマツと被っていますが、アカマツが松くい虫によって枯れていき、ネズミサシが台頭してきていることもあるようで。
葉が尖っているため、枝葉を鼠の通り道に置いて鼠除けにしたのが名前の由来の一つ。
利用方法はいくらかありますが、建材も一つ。材の性質は緻密で、日本の針葉樹の中では最も重硬。木肌は緻密で光沢がある。 樹脂分を多く含み耐久性や保存性が高く、水湿にもよく耐える。また、芳香を放つ、とのことで。生長が遅いのでなかなか大径木を入手することは難しいですが、屋外でも問題なく構造材として使えそうなレベルか?
アカマツと同じような生息範囲ですが、何と松茸菌が寄生することがあるとか。マツタケ林にしたい場合はネズミサシも残しておいた方が良いでしょうね。
10月頃に熟した果実を採取して、風通しの良い場所で陰干しして乾燥させると、杜松実または杜松子という生薬に。
ヨーロッパでは同じ仲間の西洋ネズの実をジンに入れて香りづけに使用。日本のネズでも出来ないことは無いようで。
関西では明治中期まで蚊遣りに使用されていたという記述もあり。いい匂いしそう!(もしかしたら香木として使えるんだろうか?)
自分の山の尾根上にちょこちょこ生えていますが、周辺のコナラに負けて枯れてきているような雰囲気あり。
材木として優秀らしいので、伐る時はよく考えてから玉切りした方が良いのかも。
参考ウェブページ
wikipedia、木材図鑑、イー薬草ドットコム、中川木材産業株式会社、wikipedia(ジン)
高木
アカマツ(赤松)
マツ科マツ属
別名メマツ(雌松)、オンナマツ
樹高10~35m程度の常緑針葉樹
温暖地から北海道や高標高地域などの寒冷地まで広く分布。
明るい場所を好む陽樹であり、乾燥した不毛な土地にも耐えることが出来るが、先駆植物なので利用が少なくなった里山では段々その数を減らしてきている。
自分の山でも元々はアカマツが群生していたようですが、今は松くい虫にやられるなどして枯れてしまった大木があちこちにあります。
利用方法は、やはりまずは建材。やや狂いが出やすいと言われていますが、単純な強度はヒノキやベイマツよりも高いらしいです。耐久性に関する説明はなぜか「脂が多くて腐りやすい」とか「脂が多くて腐りにくい」とか。どっち!
松脂が多く火付きと火力が強いので、高火力用の薪(鍛冶等)や松明として昔は多く利用されていたようで。
荒れた乾燥地だと他の植物が侵入しにくくなってアカマツも元気に、同じような環境を好んで共生する松茸も生産され、秋には大量に松茸を積んだ「松茸列車」が東海道を走っていたとか。
松脂そのものも利用されることもあるようで、松脂を燃やしたときに溜まる煤は高級な墨の材料に、乾燥させて生薬、滑り止めその他諸々。今は輸入物がほとんどのようですが
松の実も同じように乾燥させて生薬に、松葉はお茶や松葉サイダーとして飲用に使えたり。
松皮は救荒食の一つであり、現在でも加工した松皮餅が秋田県でお土産として売られているようで。
アカマツと日本の関係性はなかなか歴史があるものなので、探したら利用法はもっとあるかも。
なかなか奥深い樹種です。
参考ウェブページ
wikipedia(アカマツ)、toishi.info、イー薬草ドットコム、wikipedia(松脂)、地球のココロ、あきた食の国ネット
コナラ(小楢)
ブナ科コナラ属
別名ホウソ、ハハソ(柞:コナラ属の総称)
樹高15m前後、花期は4~5月の落葉広葉樹
日当たりの良い山野に普通に生え、日本の雑木林・二次林・里山と言われる森林の代表的樹種の一つ。
萌芽再生能力が高く、伐採後20年程度で樹高15mくらいにまで成長するとか。
そのため10~20年周期で伐採する薪炭林が里の周辺に広がっていたそうな。
自分の山ではアカマツの大木が枯れてきているので、高木ではコナラが優占しているという現状になっています。
利用方法は秋に実(ドングリ)が生り東北地方の山村では食料の一つとなっていたようです。
どんぐりの中ではアク(タンニン)が多い方らしく、処理は結構大変。以下、「イー薬草ドットコム」様より引用。
地上に落下したドングリを拾い集めて、洗い、新聞紙などに広げて、天日で乾燥する。
ドングリが乾いて、外皮に裂け目が出たら、皮を剥いて中の種子を取り出す。
皮を剥いたドングリは、朝夕2回、水を替えながら、7~10日水に浸す。
ミキサーにかけて、布袋に入れて、強く絞り汁を出す。
その汁を沈殿させて、上澄みを捨てて、水を足して掻き混ぜて、沈殿させる。これを数回繰り返して、沈殿した澱粉が白くなるまで繰り返す。
沈殿した澱粉が白くなったものが、ドングリ粉として食べることができる。ドングリの渋を抜く方法は、水にさらす方法や熱を加えて草木灰、木炭を入れる方法がある
コナラは多くの菌類と菌根を作るため、キノコ栽培の原木としても多く利用されています。
栽培種の代表はやはり「椎茸」。
他にもヒラタケ以外のほとんどのキノコが栽培できるようで、原木としてはかなり優れているようですね。
広葉樹であるため比重が重くてやにが少ないので、薪や木炭として多く利用されています。
「BE-PAL」でのコメントでは、「薪ストーブ愛好家の間で絶大な信頼を得る。王者の風格さえ感じさせる音と香り」とまで言わしめるほどの良材の一つ。
クワガタ・カブトムシが集まる木の中の一つでもあるとか何とか。
木工用の材としても利用されますが、材としては良い方ではないと言われています。菌が付きやすいから腐りやすいのだろうか?
参考ウェブページ
wikipedia、コトバンク、イー薬草ドットコム、月夜野きのこ園飼育日記、in-ava、田舎暮らしを満喫!地方創生ブログ、加川椎茸株式会社
コシアブラ(漉油、越油)
ウコギ科ウコギ属
別名ゴンセツ(金漆)、山かぶら
樹高7-20m程度の落葉広葉樹
日当たりの良い明るい斜面に生えることが多く、同じウコギ科のタラノキやウドと同じような生息範囲らしい。
利用方法は、何といっても若葉を山菜として。「山菜の女王」と言われ、山菜の王と言われるタラノメと双璧をなすレベル。標高の低いところなら大体4月初旬頃から採れるようです。タラノキより知名度が低いため栽培品が少なく、スーパーなどに出回ることは少ないとのこと。
材は柔らかいため米沢市の伝統工芸、笹野一刀彫の材料に。
名前の由来となっているように、昔は冬季に樹皮を傷つけて樹脂を採取し、金漆と呼ばれる黄金色の塗料に使っていたようで。でも実際は同じウコギ科のカクレミノからの採取量が大半だったようで?
自分の山にも多く生えていますが、最低でも10mくらいだったりするので、そのままでは若葉を採取できません。
もう少し樹高を低いままに出来ないものかな。
参考ウェブページ
wikipedia、木のぬくもり・森のぬくもり、旬の食材百科、wikiedia(笹野一刀彫)、wikipedia(金漆)、山菜きのこ直売所ちいくろ
ディスカッション
コメント一覧
本当に勉強になります。「出稼ぎしながら山暮らしと農業について研究中」、とのことですが、へたな森林研究者、山林研究者よりもずっと専門家だと思うんです。これからも勉強させて頂きます。
ありがとうございます。
間違ってそうなところあったらツッコミ入れてくださいね!