生鮮野菜・乾燥野菜の出荷用容器包装の法律と基本 鮮度を保つには?

2019年6月17日調査

野菜の包装

スーパーや直売所に行けば色々な野菜が販売されていますね。
包装されずに売られているものがあれば、包装されているものもあります。

どうして包装しているんだろう?
どうしてその材質で包装しているんだろう?
包装材はどんなものを使えば良いんだろう?

 

将来的に山で生産した食品を販売したい自分。
野菜類の包装について疑問を持ったので、これを機に調べてみました!

 

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生野菜・乾燥野菜の包装や容器に法律・ルールはあるか?

食品に関する法律は膨大ですが、生野菜・乾燥野菜の容器包装に関するもののみ調べてみました。

調べてみたところ、以下の3つが大きく関わってくるようです。

  • 食品衛生法(食品用器具・容器包装の規格基準とポジティブリスト制度)
  • 食品表示法(JAS法・食品衛生法・健康増進法)
  • 容器包装リサイクル法

小規模農家ならば、具体的にどう関わってくるのか?
1つ1つ調べてみましょう。

 

この法律の項目は素人がネットで調べただけなので、間違っている可能性があります。
確かな情報が欲しい人は、お近くの保健所や自治体へお問い合わせを!

 

食品衛生法(食品用器具・容器包装の規格基準とポジティブリスト制度)

食品衛生法の中の、「食品用器具・容器包装の規格基準とポジティブリスト制度」(→厚生労働省)が、容器包装の衛生基準となっています。

特定物質の使用を禁止する「ネガティブリスト」ではなく、プラスチックは原則使用禁止にして特定の物質のみ使用可能とする「ポジティブリスト」です。
次々と新たな物質が登場する現代ではそれら全てを管理するのが難しいため、使用可能なものだけを指定する制度です。

 

プラスチック(合成樹脂)を使う時に注意すべきことは?

農家の場合、市販されている包装用プラスチック袋を使えば、まず問題はありません。
販売者自身がプラスチックを合成して包装に使うなら別ですが、まあそんなことする人はいないでしょう!

使用可能なプラスチックは様々でその性質も様々ですから、この記事では説明しきれません。
「包装材の材質の中に、指定された有害物質が基準値以下の含有量としなければならない」という規制もありますが、プラスチック製造者レベルで注意すべきであって、使用者レベルでは注意しようがありません。

とりあえず、野菜類製造・販売者は、消費者・流通業者に喜ばれるものを使いましょう!

 

ただし、2019年最近はニュースでも多く取り上げられているように、プラスチックゴミの処理が問題となってきています。
ドイツでは2019年の包装法より、プラスチック製容器・包装に規制が出来てきてます。

日本もプラスチックの使用に関しては規制が出来るかもしれないので、今後の情報に注目すべきです。
今の内から環境にやさしい包装方法を考えておくのも良いと思いますよ!

 

新聞紙(古紙・再生紙)は使って良い?

食品用器具及び容器包装への「古紙」の使用には、規格基準が設定されています。
古紙の中には化学物質が残っている可能性があるためです。

その基準とは、「紙中の水分又は油分が著しく増加する用途又は長時間の加熱を伴う用途に使用されるもの」です。
例えば、以下の物が当てはまります。

  • 油こし
  • ティーバッグ
  • 紙製スプーン
  • ケーキの焼き型
  • 焼きもの料理、蒸し料理に使われる紙製調理器具

これらには、古紙を使ってはいけません。

 

逆に、以下の物など、水分や油分が少なかったり一時的な接触の場合なら古紙の使用が可能です。

  • 野菜や果物を入れる段ボール
  • ハンバーガーやフライドポテトなど、一時的な販売・喫食のために使用されるもの
  • ケーキの箱など、触れるとしても運搬時の衝撃で一時的に接触するだけと考えられるもの

ですから、普通の野菜を新聞紙で包んだりするのは可能だと考えられます。

ただ、水洗いしたばかりの野菜、魚の刺身や生肉を新聞紙で包むと、著しく水分が増加すると思われるのでダメだと思います。
流石にそんなことしようとする人はかなり少ないと思うけど…

 

また、未使用の段ボール・新聞紙などの多くは「再生紙」になりますが、使用者にとっては大きな規制はありません。
ただし、上記の古紙のように、「紙中の水分又は油分が著しく増加する用途又は長時間の加熱を伴う用途に使用されるものへの使用は避ける」ように、厚生労働省のガイドラインに載っています。

 

食品表示法(JAS法・食品衛生法・計量法)

野菜類を小分けにして包装すると、そこに「内容量」と「内容物」が発生します。
内容しているものの正しい情報表示のため、「食品表示法」(→消費者庁)があります。

農林水産省所管の「JAS法」、厚生労働省の「食品衛生法」と「健康増進法」が統合したものです。
全く連携せず国民を困惑させるお役所たちの整合性を取るための法律ですね。

なお、実際は食品表示法だけで全てをカバーしておらず、「計量法」(→経済産業省)も食品の一部には関わってきます。

 

直売所などで野菜類を売る場合は具体的にどうすれば良いのか?は、以前調べたことがあります。
以下の記事をご参照ください。

容器包装リサイクル法

家庭ごみの6割を占める容器包装廃棄物ですが、その減量のための法律です。
経済産業省が所管しています。

リサイクル義務が生じる包装は、以下の4つです。

  • ガラス製容器
  • ペットボトル
  • 紙製容器包装(段ボール・紙パック以外)
  • プラスチック製容器包装

上の容器・包装を使って中身を販売する事業者は、基本的にリサイクルの義務を負います。

ただし、売上高2億4,000万以下、かつ従業員20名以下の場合は「小規模事業者」となり、義務の対象外となります。

 

なので野菜を販売する農家なら、大規模法人以外は関わりの無い法律となります。
もしあなたが大規模法人なら、お近くの自治体などに質問して、具体的な方法を教わったほうが良いでしょう。

 

野菜類包装の基本的な考え

ここからは、美味しい野菜を消費者に届けるための具体的な方法を考えていきますよ!

生野菜も乾燥野菜も、基本的には以下の項目が容器包装材に必要な特性となります。

  • 運搬のしやすさ
  • 周辺からの汚れの付着しにくさ
  • 安価
  • 見栄え

 

ただし、生野菜と乾燥野菜では性質が大きく異なるため、容器包装材に求められる性質にも違いが出てきます。

具体的には以下の項目で説明していきます。

 

生鮮野菜は適度な通気性が必要

生鮮野菜のほとんどは、収穫後でもまだ生きています。
ですから、包装後でもガス(酸素・二酸化炭素・エチレンなど)や水の入出があります。

 

以下は農研機構の「青果物の鮮度に関する収穫後生理学」を参考にさせていただきました。

 

蒸散・蒸発によって水分が失われ過ぎると「しなびて」しまい、品質低下が起こります。
一般に5%の水分が失われると、商品としての限界に達してしまうらしいです。
ゆえに、容器の内部を高湿度にすると鮮度が保たれます。

ただし、完全密封をすると袋が曇って見栄えが悪くなるし、水分の過剰部分が出来て腐りやすくもなります。
やはり適度な通気性が必要です。
特に葉菜類は蒸散が激しく、根菜類と果菜類は少なめです。
袋が蒸れないギリギリを狙って、葉菜類とその他では包装資材も変えたほうが良いでしょう。

 

収穫後の野菜は酸素を吸収して二酸化炭素を排出する「呼吸」も行いますが、この呼吸も品質低下の要因となります。
呼吸を抑えるには「低温」と「低酸素・高二酸化炭素」状態にするのが基本です。

容器包装段階で行うことが出来るのは後者の「低酸素・高二酸化炭素」ですが、これは基本的に密封をすれば大丈夫です。
しかし、極端な「無酸素・高二酸化炭素」状態になると嫌気呼吸を行ってエタノールなどが発生し、強い異臭・異味が発生します。
呼吸でも、適度な通気性が必要になります。

 

果物や果菜類の場合は、追熟作用を起こす「エチレン」にも注意が必要です。
例えばエチレン生成量の多いメロンと、エチレン感受性の高いスイカを一緒に包装・貯蔵してしまうと、スイカが熟し過ぎてしまうことがあります。
逆に追熟作用を起こさせたいなら、一緒に包装して流通させてしまう方が良い場合もあります。

生鮮野菜はまだ生きているので、流通時に成長してしまうことがあります。
成長が早いものの場合、箱に横向きに入れて出荷すると、流通の間に曲がってしまうことがあります。
その場合は箱の中に立てて入れて出荷するなどの工夫が必要です。

トマトや果物の場合は潰れやすいので、流通時の衝撃で潰れないようにも注意する必要があります。
例えば、パックに入れて動かないようにラップをする、緩衝材を巻くなど。

 

 

私個人の場合は生椎茸を販売してみたいのですが、椎茸は特に水分に弱い食品です。
ゆえに通気性のある袋で出荷したほうが良い、と考えられていました。
しかし、「変色の主な原因は酸化であり、密封したほうが良い」という研究結果(→岐阜県森林研究所)もあります。

 

各野菜の容器包装にベストはありません。
常に研究したり、アンテナを張って情報収集していくべきです。

 

乾燥野菜は密封&脱酸素が基本

乾燥野菜なら、外気からの防湿性が不可欠です。
生鮮野菜と違って既に「死んで」いるので、ガスや水の交換をする必要はありません。

プラスチック登場以前なら、乾燥した外気を利用するため容器包装には「通風性」が必要でした。
しかし現代では安価な防湿プラスチックがあるので、外気の湿気から内容物を守るのが基本となります。
水分を少なくするほど保存性が高まるし、「酸化」も品質低下の要因になります。
乾燥野菜の容器包装には、外気遮断性が必要です。

生鮮野菜なら曇りを防止するために小さな穴の開いた「防曇袋」が多く使用されますが、乾燥野菜では使いません。
材質に強い防湿性があり、包装後に密封出来るものが基本となります。

 

密封袋は色々ありますが、一番使いやすいのは「ジップロック」ですね。
何度も使えるから家庭では便利ですが、農家が大量に使うには少し高価です。

そこでおすすめなのが、脱気密封が出来る「フードシーラー」です。
これを使えば1枚当たりのコストが下がるし、密封が出来るし、酸化を防ぐ脱気も簡単です。

家庭用から業務用まで様々あります。
直売所などに小口出品するような方なら、まずは家庭用を購入してみてはいかがでしょうか。
出品だけでなくて、生活でも普通に使えるから便利だと思いますよ。

 

出来れば乾燥材も一緒に封入するのがベストです。
ネット通販だと簡単に業者用のものが買えますよ。

 


包装袋・資材の種類

ここからは更に具体的に、野菜にはどんな包装袋・資材があるかをご紹介。

 

各包装資材は、直売所や農協、プロ用ホームセンターなどで主に売られています。

ネットでは色々ありますが簡単に検索してみると、Amazonモノタロウベジパケパック・デポなどがヒットしました。

防曇OPP袋(ボードンパック)

最も基本の、生鮮野菜包装袋です。

OPPとは、「2軸延伸ポリプロピレンフィルム(Oriented PolyPropylene)」というもので、安価で透明度が高く引っ張っても伸びない性質があります。
引き裂き強度には弱いですが、見栄えが必要で強度を重視されない包装材としては最も多く使用されています。

防湿性があるので、生鮮野菜(特に葉菜類)に使う場合は微小な穴の開いた「防曇袋」を使うべきです。
まあ「野菜出荷用の袋」で探せば、まずこの防曇OPP袋がヒットしたり紹介されたりしますが。

 

普及しているので多くの形状のものが販売されており、選びやすいです。

キュウリ・ナス・ネギを入れるような上側の開いたもの、レタスを包むような正方形1枚もの、ミニトマトを入れる自立型のものなど。
出荷しようと思う野菜の種類や大きさで、袋の形状を選びましょう。

1個口10,000枚のものや100枚のものなど、入数も様々です。

 

表側を透明な防曇OPP、裏側を通気性の良い不織布となっているものもあります。
こちらのほうが1枚当たりの価格は高価になりますが、見栄えが良くなります。

高品質野菜を売りたいときはこちらもお試しあれ!

鮮度保持フィルム

フィルム製造業者が研究を重ねて作った、野菜の鮮度保持フィルムも販売されています。

生鮮野菜はガス交換や湿度が「適度」でないといけませんが、鮮度保持フィルムを使うと包装内部の環境を調節して鮮度を保ってくれます。

 

色々なメーカーが作っていますが、業務用のものを入手しやすかったり有名なのは、住友ベークライトの「P-プラス」やベルグリーンワイズの「オーラパック」かな?

その効果は各公式サイトに載っていますので、ご興味のある方は是非ご参照ください。

住友ベークライト

ベルグリーンワイズ

成形容器、フードパック、トレー

生鮮野菜ならトマトやキノコで使われていることが多い、形の定まった容器ですね。

トマトでは容器が衝撃を抑え、キノコでは向きを揃えられて見栄えが良くなります。
OPPでは衝撃の吸収が出来ないので、このような若干の剛性がある容器を使うべきとなる場合もあります。

 

材質には色々ありますが、肉や魚の容器にも使われるポリスチレン、透明のPETが主に使われています。

 

青果ネット

オクラ、ニンニク、ミカンに多く使われているのをよく見かける、プラスチック製のネットです。

通気性が抜群ですから、しなびにくくて呼吸量の少ない果菜類や根菜類に使うのが良いでしょう。

フルーツキャップ

ついでに果物の包装も。

フルーツキャップは、リンゴやモモなどに巻かれていることが多い、果物同士の衝撃を少なくして痛みにくくした緩衝材です。
大玉トマトに使うのも良いかもしれませんね。

フードシーラ―用袋

乾燥野菜を密封する場合は、シールが出来る袋を選びましょう。

フードシーラ―用のロール巻になっているものと、口だけをシールすればよい防湿(バリア)OPPなどがあります。
所持しているフードシーラ―で使えるサイズや材質も決まってくるので、合うものを選びましょう!

 

段ボールで野菜を出荷する場合

市場や通販で出荷する場合、段ボールが不可欠となってきます。

直接直売所に持ち込むよりも運送時間が長くなるので、鮮度保持にはもちろん気を付けねばなりません。
上記の生鮮・乾燥野菜の包装容器の基本に則って、かつ流通業者が扱いやすいような梱包にする必要があります。

その段ボールがスーパーなどの小売り店に行き着くなら、そのまま陳列棚に置けるような完成された小分け包装にしておくと良いでしょう。
鮮度保持も可能です。

消費者に直接届くなら、過剰な小分け包装は避けたほうが良いです。
ゴミが多くなるし、手間も増えます。
ただし、鮮度保持のための包装なら必要でしょう。

 

また、流通時には衝撃が加わることがあるので、衝撃に弱いものは緩衝材も入れておくべきです。
例えばリンゴなどの果物なら、以下のような資材が使われるようですね。

りんご梱包資材

末吉商店様より(http://www.sueyoshi-shouten.jp/2390.html)

 

さいごに

いかがでしたか?

調べてみたら結構膨大な情報量の記事となりました。

しかもまだ調べ足りないと思っている箇所もあるほどです。
商品の脇役である容器・包装ですが、なかなか奥深いものですね。

野菜類を出品したい場合、とりあえず売り場に並んでいる他の人の商品の包装を見たりして勉強して真似をしたり、自分なりにゆっくり改善したりすることを推奨します。

 

この記事が包装資材の基本的な知識と選び方の普及に役立つことを願って!
ではまた!

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