林業・山林用刈払機(草刈機)の選び方とおすすめの機種
林業には「下刈り」という作業があります。
植樹した木々が生存競争に負けぬように、他の草木を刈っていくことですね。
しかし温暖湿潤な日本では草木の伸びが早く、少しほったらかすだけで強靭な灌木が繁茂していってしまいます。
ただでさえ農地や空き地などよりも広い面積を扱う林業、この下刈りを楽にこなすにはどうすれば良いか?
そんな下刈りに多く使われているのが、「刈払機」です。
しかし「じゃあ刈払機を買おう!」と思っても、農家の皆さんや土木業者の皆さんも多く使う機械ですから、種類も多くあって何を選べば良いのかが分かりにくい!
そこで、今回の記事では林業・山林用の刈払機とは何か?ということを焦点に当てて、その選び方や具体的な機種を調べてみることにしました!
今回は農業用のものなどの紹介は省きますが、しかし刈払機の選び方ということに関しては共通するところも多いと思いますので、林業家以外の方にも読み進めてもらうとありがたいです。
刈払機とは?
刈払機とはエンジン、シャフト、回転鋸(丸ノコ)で構成された、草木を刈っていく機械です。
「草刈機」とも呼ばれることがありますが、行政的には「刈払機」が正しいようですね。
一般的に草刈機と言うと芝刈り機みたいなものも含まれますから、混同を防ぐためにこの記事での呼称は「刈払機」に統一します。
芝刈り機などとの最大の違いは、刈る力が強いことです。
柔らかな草だけでなく、鉈などで切らないといけない強靭な灌木だってスパスパ切れていけます。
それゆえに農地や庭園などとは違って、山林では刈払機(それも強力なもの)が多用されています。
また、刃が露出し、多くの草木を刈っていけるわけですから、使い方次第ではかなり危険な機械となります。
「キックバック」と言われる現象で吹き飛ばされると周囲の人をバッサリ切ってしまって、最悪死亡事故にも繋がってしまうこともあります。
今回は安全対策に関する記述は省略しますが、使用時は最大限の注意を払いましょう。
林業・山林用に求められる能力
山林に生えてくる草木はどれも強靭なものばかりですから、生半可な力では歯が立ちません。
ですから林業・山林の下刈りでは、数多くある刈払機の中でも、パワーのあるものが求められています。
強力な刈払機は山林用、中くらいのものは農地用、お手軽に使えるものが自家用として住み分けがされているわけですね。
広大な山林を刈り払っていくわけですから、少しでも作業者の負担を減らすために軽量なものが喜ばれます。
ただ、パワーを増やすにはエンジンを大きくしなければならず、どうしても力に比例して重量も重くなってしまいます。
山林用刈払機にも様々なものがありますが、出来るだけ適正なパワーと重さのものを選んでいった方が良いです。
そのバランスを取るのが難しいですが…
機種の絞り込み方
では実際に数多くの機種がある刈払機の、山林用の物を選ぶための絞り込み方を説明していきましょう。
動力
刈払機には有線電動式と充電式とエンジン式のものがあります。
電動式は音が静かで電気以外の燃料が必要無いのが特徴ですが、エンジン式よりもパワーが無い傾向があります。
また、有線式は山林で使うには発電機が必要だし、充電式は充電に時間がかかります。
ガソリンがあれば動作し、小型なのに強い力を生み出せるガソリンエンジン式のものが山林ではほぼ確実に使われていますね。
2サイクルと4サイクル
ガソリンエンジンには2サイクルのものと4サイクルのものがあります。
2サイクルはガソリンに2サイクルエンジンオイルを混合したものを燃料としますが、特徴としては「エンジンが軽い」「力が強い」というものがあります。
対して4サイクルの燃料はガソリンだけとなり、エンジンオイルはまれに補給するだけで良いです。
特徴は2サイクルに比べて「燃費が良い」「重い」「力が弱い」という傾向があります。
4サイクルエンジン自体は素晴らしいのですが、山林はただでさえ斜面が多く作業者自身の負担も重くなるため、軽くて強力な2サイクルエンジンのものが一般的に使用されています。
4サイクルは農地や空き地の草刈りを行うなら、十分選択肢に含まれるものです。
排気量
ガソリンエンジン式刈払機の排気量にはいくつかありますが、一般的にその数値と用途には以下の傾向があるようです。
- 「20㏄前後」:自家用
- 「23~26㏄」:農地、空き地用
- 「30㏄以上」:山林用
もちろん上の区分は目安であり、23㏄でも山林では使えなくは無いでしょう。
ただ、排気量が少なくなればその分パワーも落ちるため、草は刈れても灌木がなかなか切れず、作業時間が長くなって疲れやすくもなります。
山林の草木ばかり刈っていくなら、やはり30㏄クラスが良いでしょう。
農地と山林半々くらいなら26㏄くらいでも十分使えるでしょうが。
ハンドル
刈払機には「U(両手)ハンドル」「ループハンドル」「ツーグリップハンドル」「背負い式」があります。
多くの刈払機ではUハンドルが基本となっていますが、このタイプは安全で、身体の負担が各所に分散されるメリットがあるのですが、他のものよりも自由な動作がしにくいデメリットがあります。
ですから斜面が多く障害物も多い山林では、Uハンドル以外のものも使われています。
また、Uハンドル以外ではエンジンをリュックのように背負って腕の負担を軽減する「背負い式」もあります。
刈払機安全教育上ではUハンドルが推奨されていますが、山林用刈払機のハンドルは何がベストかは決めかねます。
多くの刈払機メーカーは同じエンジンとシャフトであっても様々な形式のハンドルのものも同時に製造しているため、好みのものを選びましょう、ということですね。
ただ、刈払機の基本はUハンドルであり、最も安全だし山林でも普通に使えるということは誤解なきようお願いいたします。
条件に合う林業・山林用刈払機
それでは上記の条件に合致した刈払機を探してみましょう。
もっと探せば以下の物以外にもあるかもしれませんが、とりあえず代表的なものを載せてみましたよ。
排気量は30㏄クラスの、強力なものです。
山林使用でもこれだけのパワーがあれば、なかなか不満を感じることは無いでしょう!
記事のスペースの都合上全てUハンドルの物を載せましたが、他のハンドルの物も販売されていることがほとんどのため、ご希望の方はリンク先などからお調べくださいませ。
ゼノア
BCZ315W
排気量:29.5㏄
重量:5.5kg
農林業機械メーカーとして定評のある、ゼノア製です。
チェンソーと同じく低排気量の自家用からハイエンドのプロ用機器まで様々なものが販売されており、有名なメーカーでしょう。
「とりあえずゼノア買っておけば間違いは無い」という言葉もあります。
今回載せた機種の特徴としては、以下の別メーカーの刈払機を見れば分かるように、30㏄クラスの中では最も軽量です。
長時間、傾斜地などで作業しないといけない山林使用では、この軽さとパワーは何者にも代えがたい魅力です。
ゼノア製では他にも、排気量33.6㏄の「BC3510DW」、41.5㏄の「BC4410EZ」があります。
更に強力なものを試してみたいという方はご購入してみてはいかが?
共立
SRE3000UHT
排気量28.1㏄
重量5.9kg
こちらも同じく定評のある農林業機械メーカー、「共立」の刈払機です。
共立の大型チェンソーはハスクやスチールにも張り合えるくらい優秀!
林業者ならお馴染みでしょう。
「共立」は以下の「新ダイワ」と合併して出来た「株式会社やまびこ」の製品ブランドとなっていますが、とりあえずこの記事では分けています。
SRE3000UHTの特徴は、ハードな下刈りにも耐えるジュラルミン操作桿。
他の刈払機では安価なアルミが使われることが多いですが、高価なジュラルミン使用で強度も高まり、故障も少なくなることでしょう。
ちなみにUHTはスロットル方式が「ツインスロットル」なのに対し、UHSは「トリガーレバー」となっています。
購入の際はお好みの方を選びましょう。
ECHO
EGT300DX
排気量:30.5㏄
重量:6.6kg
株式会社やまびこの中のブランドの一つとなっている、ECHOの刈払機です。
充電式や自家用刈払機も製造している中で、最も排気量が大きい機種がこのEGT300DX。
左右非対称ハンドルを採用しており、体にフィットして作業時の疲れを軽減します。
刈払機はキックバックを起こさないように右から左へ動かすものですから、非対称ハンドルによってその動きをしやすいでしょう!
新ダイワ
RM350-2E
排気量:33.6㏄
重量:7.1kg
共立と兄弟のようになっている、株式会社やまびこの製品ブランド「新ダイワ」。
こちらも共立同様、刈払機やチェンソーを製造しています。
新ダイワにも28㏄クラスのものがあるのですが、共立と差別化を図るべく33㏄クラスのものを載せてみました。
共立にはUハンドルの30㏄以上のものは製造してないようなので、強力なものが欲しいなら新ダイワで良いんじゃないでしょうか?
RM350-2Eは排気量33.6㏄の大型・高耐久の山林用モデル。
重量は7.1kgもありますが、使用時は物凄いパワーを発揮してくれることでしょう。
他にも排気量41.5㏄の「RM451-2E」が製造されています。
シングウ
NX-3600H
排気量:34.0㏄
重量:6.6kg
国産チェンソーメーカーの一つとして林業界でも有名なシングウ。
林業界の総合商社として幅広い事業を展開しており、林業機器の製造もその一つ。
NX-3600は排気量34㏄、山林用の中でもハイパワーモデルです。
特徴は、回転数の設定・記憶が出来る「トリオレバー」を採用していること。
山林では不安定な足場で刈払機を使用するため握り加減の調整もしにくいですが、このレバーにより常に一定の回転数を維持することが出来ます。
ホンダ
UMK435(UWJT)
排気量:35.8㏄
重量:6.7kg
超大手機械メーカー、ホンダも刈払機を製造しています。
農家向けの中程度排気量までしか作ってないかと思いきや、排気量約36㏄の大型のものも作ってたんですね…
UMK435の特徴は、この記事の他の刈払機と違って燃費の良い4サイクルエンジンであること。
4サイクルエンジンなら重量も重くなるはずなのに、この機種に限っては排気量にしてはそれほどの重さは無く、2サイクルの機種と変わらないくらいです。
しかも排気量の割に定価が安いです。
マキタ
MEM303T
排気量:30.5㏄
重量:5.9kg
電動工具業界で国内シェア1位をひた走るマキタが製造している、2ストロークガソリンエンジン刈払機。
マキタに限っては数多くの充電式刈払機も製造していますが、エンジン機器にも定評があります。
数多くの優秀な工具を生み出した技術を、エンジン機器の開発にも多大に活かしていることでしょう。
林業界でマキタ製を使う人はほとんどいませんが、性能的には侮れないものですから見過ごすには惜しいメーカーですよ!
マキタも排気量30㏄クラスのプロ用刈払機を製造しています。
重量は6kg以下に抑えられており、強度と軽量化を両立しています。
ちなみに他の刈払機と違って、この「MEM303T」だけ燃料混合比が25:1だったり。
スチール(STIHL)
FS120
排気量:30.8㏄
重量:6.3kg
税抜き39,800円
世界のチェンソー業界で1,2を争う我らがスチール。
チェンソーだけでなく刈払機も多くの種類を製造しています。
スチール製品だけは通販で買えないので、ご購入の際はお近くの販売店へ。
上に載せた「FS120」は排気量30㏄以上なのに、何と定価が税抜き39,800円。
排気量に対するコストパフォーマンスは最高です。
重さが気になるという方は、「FS111」がおススメです。
排気量31.4㏄で、重量5.8kg。軽い!
でも定価は税抜き61,800円…
世界のスチールですから、品質は約束されています。
30㏄以上の強力な刈払機を製造しているメーカーは、他にも以下のものがあります。
入手する機会があったらチェックしましょう!
- 「カーツ」
- 「ニッカリ」
- 「キンボシ」
- 「イリノ」
- 「丸山製作所」
- 「マルナカ」
まとめ
この記事では林業・山林用の刈払機に必要な能力や選び方を調べ、条件に合致する機種を探してみました。
刈払機には数多くの種類や能力がありどれを選べば良いのかが一見分かりにくいですが、この記事によってどんな感じで選んでいけば良いのかがご理解いただけるようになったら、幸いです。
刈払機は日本中どこでも使われている機械ですから、中古製品が出回ることも多いです。
古い機種だとそれがどの用途なのかが調べにくいですが、そういう時はこの記事と商品のスペックを見て何用なのかをご判断いただくと、間違いも少なくなると思います。
皆様が良い刈払機を見つけて、清々しい草刈りライフを送れるように!
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません