農業をはじめたい人の本

実用書・一般書

図表が多く現代農業の概要がわかりやすい

写真、図、表が多く視覚的にも読みやすいため、まさしく農業をはじめたい全ての人に向けた本であるし、どのような人にも読むことが出来る農業入門の本です。

新規就農希望者に対しての本は他にも多くありますが、この本は農業の始め方だけでなく、戦後から現代までの農業の基本的な歴史や方法が書かれており、現代の日本の農業の概略も知ることが出来ます。
というわけで、この本は生産農家として知っておくべき現代の日本の農業のことも書かれておりますので、農業という業種を知りたい人にはおススメの本となっています。

例えば、米は戦時中に作られた法律である食糧管理法に則って価格や生産を決めていましたが、1995年に廃止されました。
それから輸入などを認める流通の自由化が始まり、競争相手も増えたためとりあえず作っておけばどうにかなる、というようなことは無くなりました。
大規模生産のしやすい米において新規就農者が質より量のような経営戦略をとるのは厳しいので、ゆえに古代米や他の特徴ある米などのような付加価値の高いものを作って様々な販売ルートを用いていくことが重要となり、チャンスであるということです。

新規就農者の中では有機農法に関心を持つ人も多いと思いますが、敵対関係にある農薬についての知識を深めておくのは逆に経営戦略としては正しいことでしょう。
この本には意外に農薬についての基本的なことからこれからの農薬制度のことなども書かれています。
農薬の摂取基準量の決め方や類型や使用法による分類、農薬の歴史などについては農薬を使う人にも使わない人にも役立つ知識でしょう。
また、農薬を使わずに他の病害虫対策を取らなかった場合の損失量試算も載っていますが、作物毎に異なりますが最低でも3割の減益になるようです。(リンゴは99%減!)
有機農法は難しい。だからこそやる気のある新規就農者でも初めから有機農法一本で頑張るよりも、いくつかのリスク回避をしながら経験値を溜めていくのが基本となるのではないでしょうか。

他にも米、果樹、野菜栽培の基本的な流れが書かれてあります。
ほとんど家庭菜園レベルのこともしたことが無いような人でも、農作物を作るという基本をイメージできるようになるかと思います。

 

農業を始める場合

この本でもやはり新規就農する場合は、一番最初に新規就農相談センターで相談するのをおススメしています。
それから農業を始めるのに必要な「資本」と「土地」と「技術」を得るための計画を立てていくことになります。

と言っても、この本には詳細な「資本」と「土地」と「技術」の入手方法はあまり書かれていません。
現代農業での経営戦略、というのが多いでしょうかね。

現代日本での新規就農者では「施設野菜」と「露地野菜」を始める人が多く、やはり「施設野菜」のほうが経費は高いけど所得も高くなるようです。
新規就農者は広大な土地や大型機械をいきなり手に入れるのも難しいので、量より質、つまり付加価値の高い作物を作っていくことが肝要となります。

労働集約的農業は自分の体力にかなり準ずるところがありますが、上手くやれば自分の人件費以外の費用を抑えて粗利益率を上げることが出来るかもしれません。
農業は様々な種類の経費がかかるものですが、利益を増やす方法は売り上げを増やすだけでなくて経費を減らすことによっても成り立ちますので、経費削減を常に考えていくべきでしょう。

生産するだけでなく販売ルートの開拓も進めていかなくてはなりません。
最近では農作物の販路もかなり多様になってきており、ネット出店や契約生産だけでなく、農家と消費者を結ぶマッチングサービスみたいなものもあり、常に情報収集していく必要のある分野です。

また、どれだけの量を作れるかという生産管理も進めていく必要があります。
新規就農者がいきなり本や統計方法に載っているとおりの生産量を作れるとは限らないので、この本では1年目では平均の5割、3年目は7割、5年目で平均くらいとするような生産計画を立てることを勧めています

JAや市場への出荷では価格は相手に決めてもらうことになりますが、直販などでは自分で価格を決めることになります。
そのためには原価の計算もして赤字にならないように気をつける必要がありますが、この本にも一応原価の基本的な算出方法(損益分岐点など)が載ってあります。

就農してしばらくは難しいと思いますが、法人化を目標としてみるのも面白いかもしれません。
この本にも法人化のメリットが書かれており、融資条件と対外信用力の向上というブランド化のようなもの以外にも、ちゃんと税制上の優遇も載っています。
基本的に、年間所得が695万円を超えると法人税のほうが有利となるし、赤字分の繰り越し控除は7年間可能となります。(個人事業では3年)
法人化にあたっては多くのやるべきことがあって面倒かと思いますが、経営者として優れた農家なら案外始めやすいのかもしれません。

 

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