農で起業!実践編

実用書・一般書

目次

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・50歳+全くの異業種から専業農家へ

・ビジネス的なデータの収集と考え方

・廃業モデルについて

50歳+全くの異業種から専業農家へ

著者は元々、外資系企業の営業統括本部長であり、農業については全く知りませんでした。
安定的な収入も、長時間労働や多くの責任で安らぎも無くなったサラリーマンをやめて、地に足のついた仕事をしたいという理由で、農業を始めたというふうに書かれています。

始める前に完璧な営農計画を立てていたというわけでもなく、宮崎県の綾町に来てから何をどうやって栽培したら良いだろうかということを研究したようです。
しかしそこからの行動が普通の人とは異なります。まず農協に行って町内世帯の生活費や種々の作物の栽培データをもらって営農計画のシミュレーションを行っています
隠居生活中に趣味で家庭菜園を行うのではなく、収益を目的とするビジネスとしての農業をやろう、ということで著者の最適化農業が始まることになります。

 

ビジネス的なデータの収集と考え方

収益を目的とする農業にとって、栽培作物の決定は重要です。
著者の最初のシミュレーションとして、栽培面積、粗収入、総労働時間などから時給や純資本回収率(年ごとの投資資金の回収率)を計算しています。
また、1年の内のいつ頃になにをやるか、というアクションモデルを立てたり、肥料や資材のデータを収集して徹底的に管理することで費用を抑えたりもしています。
データの収集と解析によって、作物や事業規模の変更なども行い、結果的には生産性(≒時給)が3倍にもなったようです。

著者の研究は農協に頼らず、自分で試行錯誤を行うことで成されたものです。
農協は一つの方法として、販売は通販や道の駅などでも行い、ぶどう狩りの観光農園まで行っています。
多種多様な販売や栽培は、どれかが駄目になってしまった場合のリスクの分散にもなりますし、生産性の解析によってどの方法にいくら労力を割けば良いかという研究にもなります。

この本には作物の研究例として、著者の主要作物である葡萄のことが多く書かれています。
SPAD計を用いた窒素の最適な施肥方法の研究や、糖度測定値の平均や標準偏差を用いた観光農園の開園日の決定、農園入り口に熟期を遅らせたものを置くことによるお客様のリピート率低下を防ぐことなどが書かれています。(意味わからない人は読んでみよう!)
いくつかは果樹関係のことをされている人でないと理解が難しいところもあるかもしれませんが、ビジネスとしてどのようにデータを収集して解析し、利用していくかということの具体例として、非常に参考になると思います。

 

廃業モデルについて

著者は50歳から農業を行い、この本の原稿を書いているのが70歳くらいの頃のようです。
農業の利益や生産性は良くても流石に年齢が年齢ですので、廃業についてのことにも注目しています。

農業は国に保護されており、土地の税金等は安くなっています。
しかしその保護に甘んじて土地の使用責任を果たさない所有者もいますし、そのまま何の対策も行わない行政の怠慢もあります。
土地の所有責任を果たさない所有者にはその権利を放棄させて、必要な人に与えたりするような仕組みが必要であるとしたり、上手い引き継ぎが大事であるということを著者は主張しています。

単に自分の子供に農業を手伝わせて、技術や経験は見て覚えさせる、というだけではうまい引き継ぎが出来ません。
引き継ぐ人や引き継がれる人の考え方は様々ですが、著者はそれに備えて多くのプランを考えています。
例えば、親子共々経営がしたいのなら土地を分割したり、土地の一部を使用して様々な実験をさせてみたり、親が子供の事業専従者となって子供全てを任せてみたり。

タイトルは農で起業!という割には廃業まで書かれているのが中々面白いですね。
まあそれは、著者が年をある程度とってからの就農であり、短い間で多くの経験とデータを蓄積したという証拠の表れでもあるでしょう。
起業、営農、廃業のノウハウをビジネス的にも社会的にもまとめられたということには、人生の先輩としても尊敬出来るものだと、私は思います。

 

本の目次


誰でも成功できる農の世界へようこそ

自由で楽しい農業を目指そう
就農前の準備が成功を決める
経営を進化させるデータ管理術
農業を「ビジネス」に作り上げろ
進歩と効率化に限界はない

農を実践する!

開花・実留り編
宅配サービス編
施肥編
発芽編
資材管理編
観光農園編
経営を自動的に進化させる
栽培管理と農業の未来

農を次世代に託す

農を廃業する!
責任ある撤退プラン
葡萄園スギヤマが目指す理想の撤退モデル

 

 

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