薪作り用チェンソーの選び方とおすすめの機種
薪を作るには様々な道具が必要となりますが、その中に「チェンソー」があります。
立っている木を薪にするには、以下のような順番で作業を行います。
- 伐採
- 枝払い
- 玉切り
- 搬出
- (玉切り)
- 薪割り
- 棚などに保管・乾燥
- 使用
玉切り後のものを購入するのであればチェンソーは無くても良いのですが、自分で伐採する人や数mの原木を購入する人は、チェンソーが不可欠です。
「チェンソー」だけでも様々な種類がありますが、どれが最も薪作りに適しているかを見定めるのは難しいものです。
そこで今回の記事では、薪作りに必要となるチェンソーの性能と、各メーカーのどの機種が良いのかを調べて書くことにしました!
※この記事は「大量に薪を作る人」を対象にしています。
なのでエンジン式のものだけの記述となります。「住宅地で静かに少しだけ薪を作りたい人」は、この記事には載ってませんが、有線電動式を選びましょう。
薪作り用チェンソーに必要な特徴
林業用がベストか?
チェンソーには色々な種類がありますが、どのメーカーでも最上位クラスが「林業用プロソー」です。
安価なモデルと比較して、以下のような特徴があります。
- パワーが大きい
- パワーの割に軽い
- 壊れにくい
- 壊れても直しやすい
- 高価
金があれば薪作りにも万能な林業用プロソーを選んでしまって良いですが、なかなか手が出せない人も多いです。
「もう少し安く抑えられないか?」、と思うのが人の常。
ひとまず、薪作りに必要な性能を考えていきましょう。
薪作りでは「玉切り」を考えるべし
材木を生産する林業と比較して、薪作りでよく行う作業があります。
それは、「玉切り」です。
林業では丸太を3,4m程度の長さに揃えることが多いのですが、12mの丸太ならせいぜい2,3回くらいしか玉切りはしません。
一方、薪作りでは薪の長さに揃えて玉切りしますから、例えば12m丸太を33cmの薪にする場合は35回も玉切りしなければなりません。
林業よりも圧倒的に玉切りの回数が多いのです。
しかも、林業は柔らかい針葉樹を伐ることが多いのに対して、良い質の薪をつくるには硬い広葉樹を伐らなければなりません。
硬い木を難なく伐り、玉切りの作業時間を減らすために、薪作りのチェンソーはパワーが必要です。
重くても良い
林業でチェンソーを使用する場合は伐採や枝払いがメインとなるので、様々な姿勢で作業したり山中を歩き回るために、チェンソーは軽いものでないといけません。
しかし薪作りでは普通の林業よりも伐採本数が少ないので、チェンソーを持ちながら山中を歩き回ったり枝払いをすることも少ないです。
玉切り作業時はチェンソーの自重で切っていきますから、切れ込みさえ入れれば片手は添えるだけで大丈夫。
ですから、玉切りばかりの薪作りでは重い機種でも支障は少ない。
枝払いは重いと腕が疲れますが、伐採本数が少ないですからその時は小型のチェンソーを使ったり、鉈を使ったりしてゆっくりやりましょう。
重い機種を持つと疲労も溜まりやすいのでパワーを犠牲にしても軽いものを選ぶ人もいますが、しかしパワーがあれば玉切りの作業時間も少なくなってその分疲労が減ります。
また、チェンソーを長時間使うと恐ろしい病気である「振動病」に罹患してしまうリスクが高まりますが、作業時間を短くすればそのリスクも減ります。
ですから、低パワー・長時間作業よりも、高パワー・短時間作業の方が有利なのです。
造園・土木向けチェンソーがベスト
上記から、薪作りのチェンソーは「重くて良いからパワーがあるもの。出来れば安価なもの」がベストになります。
「そんな機種、あるのか?」と思う人もいるでしょうが、あるんです!
それは「造園・土木向け」と呼ばれたり、「オールラウンド」と呼ばれたりするものです。
造園・土木業者もチェンソーを使うのですが、頻繁に持ち運びはしないのでパワーがあって頑丈なものを選びます。
これらの機種はホームセンターで売られているものよりも高価である反面、プロやセミプロも使うような高品質なものとなります。
また、万が一壊れても修理してくれる店は多くあります。
ホムセンモデルと林業モデルの間の、中級チェンソーこそがコストパフォーマンス的にも薪作りに最適でしょう!
おススメの機種
それでは各メーカーのカタログを見ていって、中級チェンソーを実際に選んでみます。
パワーの基準となる排気量は、40~50㏄クラスを選びました。
それ以下だと仕事の効率が一気に落ちるし、それ以上だとかなり高価になったり林業用チェンソーになったりします。
薪作りする人だけでなく、造園・土木・建築業者の方々も以下のようなチェンソーをおススメしますよ!
ハスクバーナ
545 Mark Ⅱ
排気量:50.1㏄
重量:5.3kg
全世界でスチールと1,2を争うチェンソーメーカー、ハスクバーナ製の545 MarkⅡ。
この機種は「強度と信頼性に重点を置いた設計」のチェンソーシリーズの一つです。
基本的にハスクバーナでは林業プロが使用するチェンソーには「XP」という文字を付けるのですが、このシリーズはXP機と比較して安価であることが最大の特徴ですね。
XP機よりも排気量にしては出力が若干低いですが、強力で頑丈なので玉切りばかり行う薪ストーブユーザーや造園・土木業者にピッタリの機種ですよ!
旧545からはデザインを一新し、耐久性や出力もアップ。
プロ用のXP機と遜色無いレベルなのに、比較的安価に仕上がっている機種だと思います。
他にも60㏄クラスの「555」があります。
大径木ばかりある場合はそちらもおススメです。
ゼノア
GZ3850EZ
排気量:40.1㏄
重量:4.2kg
国産チェンソーで代表的なメーカーの一つ、ゼノア。
ゼノアの「オールラウンドソー」の中で最も排気量が大きいモデルが、このGZ3850EZです。
これより高価なシリーズが「プロソー」であり、安価なものは「ジャストシリーズ」と呼称されています。
他の機械でも軽量化に定評のあるゼノアですが、このモデルも排気量40㏄クラスで重量は4.2kgと、トップクラスで軽い機種です。
玉切りだけでなく、山中を歩き回って中径木の伐採も難なくこなすことが出来るでしょう。
一つのチェンソーで何でもこなしたい、という人にもおススメの機種です。
→ゼノア公式カタログへ
共立
CS480
排気量:50.2㏄
重量:4.8kg
こちらも有名な国産チェンソーメーカーである、共立の機種。
共立もゼノアと同じく「オールラウンドソー」と「プロソー」で分けていますが、このCS480はオールラウンドソーの中で最も強力なモデルです。
プロソーになると一気に価格も跳ね上がりますから、なかなか手も出しにくいでしょう。
CS480は「造園&建築現場に求められるパワーと耐久性を兼ね備えたモデル」とされています。
造園・建築だけでなく、薪作りにも役立つコストパフォーマンスの良い機種でしょう。
新ダイワ
E2048S
排気量:50.2㏄
重量:4.8kg
共立と兄弟のようになっている、株式会社やまびこの製品ブランド「新ダイワ」。
共立同様、オールラウンドソーとプロソーに分けてチェンソーを製造しています。
このE2048Sは「中速域でのトルクを重視した、堅木処理に適したモデル」とされています。
性能的には上記の共立CS480とほぼ同じと思われます。
付属のガイドバーの長さや若干の価格などで、どちらにするか選んでしまって大丈夫でしょう。
シングウ
efco141sp
排気量:39.0㏄
重量:4.4kg
林業全般に特化した企業、シングウ製のチェンソーです。
プロソーを多く製造していますが、この「efco」シリーズは数少ない安価なモデルです。
このメーカーの中でどの機種が最も薪作りに適しているか見抜くのが難しかったので、他のプロソー選んでも良いとは思いますがね(;^ω^)
日立工機(HiKOKI)
CS51EAP
排気量:50.1㏄
重量:5.2kg
日立工機(HiKOKI)はホームセンターでもよく見かけるメーカーですが、侮ることなかれ。
このCS51EAPは日立工機製チェンソーの中で最強の排気量50㏄クラス、セミプロやヘビー薪ストーブユーザーも満足できるレベルのパワーを持っています。
特徴として、「クラス最小振動」を誇っています。
振動が少なくなればその分疲労も少なくなるし、長時間作業しても「振動病」の恐れも少なくなります。
ちなみにこの機種は2013年グッドデザイン賞を受賞。
カッコよさも保証されています。
マキタ
MEA4300L
排気量:42.4㏄
重量:4.9kg
電動工具業界で国内シェア1位をひた走るマキタが製造している、ガソリンエンジンチェンソーシリーズ「MEA」。
マキタは数多くの充電式チェンソーも製造していますが、エンジン機器にも定評があります。
マキタのエンジンチェンソーはどれも排気量にしては少し重量があります。
工具屋だからこそ林業よりも土木や建築用途に特化し、頑丈で強力な製品づくりを行っていることでしょう。
「MEA4300L」は排気量43㏄ですが、これ以上の機種として50㏄の「MEA5000G」、56㏄の「MEA5600GR]、61㏄の「MEA6100UR」があります。
原木の太さや硬さで、お好みの排気量を選びましょう。
スチール
MS271 C-BE
排気量:50.2㏄
重量:6.2kg
税抜価格:107,800円
世界のチェンソーシェアトップを争うスチール!
日本の林業界でもその信頼性は全く揺るぎません。
このメーカーは数々の優秀なチェンソーを生み出していますが、造園・土木向けシリーズもあります。
MS271は軽量化を少し犠牲にして、堅牢で万能なつくりをしているのが特徴です。
チェンのテンション調整では、工具無しで行える「クイックチェンテンショナー」を搭載しています。
他にも排気量55㏄の「MS291」があります。
スチールには名機と称される山林向けチェンソー「MS261」もありますが、そちらのほうが重量が軽い(4.9kg)ので、伐採も多くする場合はそちらでも良いでしょう。
なお、スチール製品だけは通販で購入できないので、ご購入はお近くのスチール販売店へ。
まとめ
今回の記事で、薪作りに適するチェンソーの性能や機種を調べてみました。
伐採を多く行う林業家よりも「玉切り」という単純作業を多くしますから、強力で頑丈、出来れば安価なモデルを選びましょう。
薪作りのチェンソーと、造園・土木業者向けのものとでは用途が一致しているところが多いので、探すときもそのような区分を目安にすると探しやすいです。
もちろん林業用モデルを安く手に入れられるなら、それを使っても問題ありません。
皆様が良いチェンソーを見つけて、薪に囲まれた豊かな生活を送れるようにお祈りします!
ディスカッション
コメント一覧
薪作りの玉切りの環境で原木の片側をいつでも固定出来るなら、原木の上からチェンソーを下ろせるけど、両端が固定または切進んだ時両端から力が加わる場合は下側からチェンソーを入れる事になり、チェンソーの重さよりもチェンの目立てが重要になるのでチェンソーの質量は体力と相談しても軽い方が良いと感じています。
確かに切り上げ時は軽い方が良いですね。
状況的に軽さが欠かせないときもありますので、どんなときでもこのチェンソー、ってのは微妙かも。
出力の弱いチェンソーで長々作業すると妙に疲れてしまうので、個人的には強い方が好きです。