樹木の伐採に使用する道具まとめ
林業関係の職に就いたことがあり、現在山林開拓者の私が知っている、伐採に使用する道具をまとめてみました。
「伐りたい木があるけど、伐採費用を抑えたい…」とお考えの方のために、どんな道具があるかをご紹介します!
伐採は命がけの作業ですから、道具に対して過剰な節約をしてはいけません。
伐るのが簡単な木なら道具も少なくて良いですが、難しい木に対しては多くの道具が必要になってくることを覚悟しましょう!
では道具を一つ一つ紹介します。
刃物系の「切断道具」と、伐倒方向を調整する「伐採補助具」と、自分の身の安全を守るための「安全保護具」の3つに分けて説明しますよ。
切断道具
チェーンソー
伐採のメインの道具です。
種類も多く、選び方や整備など奥が深いものです。
簡単に説明できる道具ではないですから、選び方についてはまずは以下の記事をご参照いただきたいです。
なお、伐採時はチェーンソー本体以外にも、やすりとか燃料とかも必要になってきます。
こちらも別記事で詳しく書いていきます!
手鋸
伐採初心者が低木を伐る時、チェーンソーが挟まれてしまった時、樹上伐採時などに使用。
大工が使うような両刃鋸でも生木は伐れないことはないですが、生木に対しては生木用のものが使いやすいです。
鋸も色々ありますが、力を入れやすくて伐るのが早い、以下のようなカーブソーをおススメします。
電動のレシプロソーというものもありますが、人力のもののほうが調整しやすいし取り回しが良いです。
伐採時は手鋸で、果樹を大量に剪定するときなどはレシプロ使うのも良いかもしれません。
刃を変えることで生木用、木工用、金工用などに変えることが出来るので他にも色々作業する予定あるなら購入しておいても損は無いかもです。
鉈・手斧
伐採する樹木周辺の邪魔な低木を片付けたり、枝払いするときに使用。
軽くてつるなども切りやすい、万能のうなぎ鉈をおススメします。
皮も剥けるよ!
でもどこのホームセンターでも売られている角型鉈のほうが安くて研ぎやすくて頑丈ですから、枝払い(枝葉しごき)で使いまくる人など長期的なコストを考えるなら使い分けるほうがベストかもですね。
欧米風の林業がしたい、薪割りもやりたいなら、手斧がおススメです。
後述するクサビも打てますから手斧1本の方が万能かもしれませんが、それぞれの作業に特化した道具を所持するほうが作業効率が上がる、という見方も出来ます。
高枝鋸
枝打ちや枝打ちにより重心調整など、あると意外に便利です。
昔仕事で使ったときは大活躍でしたよ。
電線近くの小枝を切る時などは梯子が使えなかったりしますが、こういう道具があると遠くから切れます。
あまりやっちゃいけないけど遠くから切れるので、かかり木やかかられている木も切れます。
こちらもカーブソーが良いでしょう。腰を使って力入れると普通の鋸よりも切りやすい気がします。
伐採補助道具
ロープ
あらゆる現場作業というものにおいて活躍する基本的な道具です。
伐採時では樹体に引っ掛けて人力で引っ張ったり、倒したくない方向とは逆に付けて伐倒方向調整(後述する牽引具一つだけでは方向が不安定になる場合あり)、木登り中の安全確保などに使用できます。
かなり奥深い道具ですので、これだけで簡単に1冊本が書けるくらい。
「伐採 ロープ」で画像や動画検索すると色々出てくるので勉強になります。
自分もまだまだ知らないことばかりです。
ロープと言っても色々な種類や太さがありますが、ユタカメイクのページ(http://www.yutakamake.co.jp/syohin/gain_rope.html)が最も分かりやすくまとまっていると思います。
ナイロン以外なら9mm以上、ナイロンなら6mm以上が良いでしょう。
牽引具と併用するなら長さは20m以上、低・中木伐採時は取り回しのしやすい10m程度のものをおススメします。
使用時は先端に、ホムセンなどで売っているフックやシャックルを付けておくと使いやすいです。
クサビ
伐採木の重心調整に使用。
小さすぎる木には流石に使えないので、直径20cm前後くらいから活躍してくると思います。
クサビは基本的に2つ以上で使用するので、紐でも通して繋げておくと無くしにくいです。
サイズは揃える必要ないので、色々な大きさのものを持っていると色々な場面で使えます。
小さいもの打ってから別の場所に中くらいのものを打って、小さいもの外して大きなもの打ちなおしたり。
軽いプラスチック製が主流ですが、カシなどの固い木材を削って自作することも出来ます。
木製のほうがチェーンソーの刃が当たっても刃が欠けにくい、のか?
ハンマー
クサビを打ち込む時に使用。
金槌よりもプラスチック製などのほうが良いのではないでしょうか。軽いし、クサビの頭が変形しにくいし。
自分は片手で使えるショックレスハンマーを使用していますが、大型のクサビを使う時は両手で使う大ハンマーが使用される場合があるようです。
手斧でもクサビは打てますが、ショックレスハンマーは刃が無いから危険性は少ないし、疲れも少ないです。
木廻し道具
伐採している時、密となった森林では伐採した木が別の木に引っかかってしまう「かかり木」が発生してしまうことがあります。
発生後の対処法はいくらかありますが、木を廻して滑り落とすのも一つの方法です。
「フェリングレバー」というものは金属の棒にフックがついており、この部分に幹を引っ掛けることで人力でも木を廻すことが出来るようになる道具です。
また、先端をバールのように使ってチェーンソーの刃が挟まれないようにするということも可能です。
ただ、重いので常時携帯することは難しいです。
フェリングレバーの使用頻度は少ないし重くて持ちたくないという方は、「木廻しベルト」がおススメ。
現場で発生した小径木をベルトに通し、てこの原理で木を廻します。
フェリングレバーよりセットが若干面倒ですが、持ち運びはこちらのほうが断然楽です。
牽引具
ワイヤーやロープを強力に引っ張って樹体の重心を大きく調整できる道具です。
これがあれば重心とは真逆の方向にも倒すことが出来るので、伐採初心者にとっては必要不可欠な道具の一つなんじゃないかな?
なお、使用する場合は後述の台付が必要となるので、そちらもお忘れなく。
牽引力は色々ありますが、直径50㎝越えの木を伐りまくるとかでないなら750kgくらいのもので十分じゃないかと思います。
直径100cmくらいの大木を引き倒すときに見たものは3000kgくらいのものでしたが、本体がものすごく重くて手伝うのも苦労したくらいです。
特殊伐採業者でないなら小さめで十分でしょう。
牽引具には付属のワイヤーロープを牽引する所謂「チルホール」とロープを引っ張ることの出来る「ローププーラー」に分かれるのではないかと。
一応荷締め機などでも引っ張ることは出来ますが、引っ張る距離が短く使いにくいと思います。
ロープを使う分ローププーラーのほうが取り回しがしやすいような気がするので、牽引力750kgくらいまでならワイヤー使うよりもロープのほうが良い、のかな?
滑車
伐採するものとは別の樹木に取り付けたりすることで、ワイヤーやロープの向きを変えて安全に牽引出来るようにする道具です。
牽引方向によって滑車にかかる荷重は変わったりするかもしれませんが、とりあえず上述の牽引具以上の耐荷重あるもの見つけて使うと安全かと。
伐採だけでなく工事などでも使ったりするので、もしかしたら中古も見つかりやすいかもです。
台付
樹木に巻き付けて、滑車や牽引具と繋げる道具です。
一応これは消耗品扱いでして、林業作業員は自分でワイヤーの両端に輪を作って自作する人も多いとかなんとか。
昔の作業員の日当はワイヤー台付けをいかに綺麗に素早く作れるかで決まったとかなんとか。
面倒だから買う人も多いですがね。
ワイヤーの両端に輪が付いたものには台付用と玉掛用があります。
台付用は牽引や荷物の固定に、玉掛用はクレーンなどでの吊り上げ作業に使用します。
もちろん玉掛用のほうが強度が必要となるので作るのも難しく、価格も台付用に比べると少し高価です。
ワイヤロープ、スリングベルトの性能の比較に関しては「もえろ!タマカケ魂」(何だこのサイト)に載っていますので見てみると、やはりスリングベルトのほうが耐食性、軽さ、柔軟性に優れており、保管や取り回しがしやすいでしょう。
しかしワイヤロープよりも摩耗性が高く尖っている部分などには弱いらしいので、取り付ける時はゴザみたいな養生材を付けることをおススメします。
地面を引きずって集材する場合などでは、やはりワイヤロープが良いのではないでしょうか。
とりあえずワイヤーにしろベルトにしろ、対象物+牽引具+滑車用として最低3本必要。
梯子
木に登って上方に台付を付けたり、枝打ちしたりするときに使用します。
梯子が無いとロープぶん投げて樹体に引っ掛けたり、木登りしていかないといけなくなります。
木製の梯子を木に打ち付けて登っていく人もいましたが…。
高いところに上る道具には梯子や脚立がありますが、梯子兼用脚立のほうが日常生活にも使いやすいです。
しかし兼用脚立は梯子よりも幅が広くなりがちで、梯子として使うには少々取り回しがしづらいです。
梯子は長さを伸ばせる2連、3連のものがあり、高さ調整がしやすいですし幅も狭いので取り回しヨシ。
伐採に使うとしたら、脚立よりも使いやすい梯子をおススメします。
庭木の剪定などでは造園業者も使うような長い脚立、かな?
安全保護具
ヘルメット
必ずつけましょう。
伐採時の危険は倒れてくる樹体だけでなく、上方で折れた枝などが落ちてくるというのもあります。
低木伐採時でも高木の枯れ枝が低木に引っかかっていたりすることもよくあるので、知らずに切ると頭に落ちてきます。
ヘルメット無しで施工している業者がいたら「ああ、作業者も監督も全員(ry」と思うレベル。
プロ用のものにはイヤーマフと安全メガネが全部付いたものがありますので、これがあると便利。
でも自伐するだけならそこまでガチなものを買う必要は無いので、とりあえず何でもいいから頑丈な物を被っときましょう。
防護ズボン
チェーンソーで怪我をする部位の割合は脚部6割、足先2割となっています。
ですのでチェーンソーで大怪我をしたくないなら下半身を保護しておけばその危険も大分和らぎます。
ズボン型とズボンの上から取り付けられるチャップス型がありますが、丸一日ずっと作業するならズボン型、たまに使うなら付けたり外したりが容易なチャップス型が良いのではないでしょうか。
チャップスは藪の中に入ると引っかかりやすいのが難点ですが…。
安全靴
チェーンソーでつま先を切らないように先に鉄芯が入ったもので、急斜面でも歩きやすくて滑りにくいスパイク地下足袋がおススメです。
滑りやすい靴を履いているとチェーンソー使用時や伐倒瞬間の退避時に危険な思いをすることでしょう。
安全ベルト
木登り時などに使用。
ロープでも代用できますが、そんなに高価な物ではないので一つ買っておくのも良いんじゃないでしょうか。
装備の一例
レベル1(柴刈り、低木伐採)
手鋸+角型鉈+ロープ+ヘルメット
金額 1~2万円
レベル2(薪集め、簡単な伐採)
レベル1+安物チェンソー+クサビ+ハンマー+防護ズボン+安全地下足袋
金額 6~7万円
レベル3(山林開拓、林業者)
レベル2+プロ用チェンソー+高枝鋸+牽引具+滑車+台付+梯子+安全ベルト
金額 約8万円+チェンソー代
レベル4(特殊伐採業者)
この記事に乗っているものほぼ全部+ハーネス、カラビナなど樹上伐採装備、高所作業車、大型クレーン、頼れる相棒
金額 お高め
庭木の伐採費用を安くするために
今回の記事で、伐採に使う必要最低限レベルの道具を載せてみました。
伐採道具を知らない人から見れば、全部揃えるのは高くて大変だと思うのではないでしょうか?
しかも伐採作業は道具だけでなく、それらを使いこなす技術や、木の物理的性質に対する知識など、多くの経験が必要です。
山を持っていて、これから何十本何百本と伐っていくなら、道具を揃えて技術を身に付けるのも良いです。
しかし、庭木を数本切るだけなら、自分で切るよりもプロに任せた方が道具代や勉強代を節約でき、事故の確率も減ることで、結局は得になっていきます。
もちろん伐採したい木の難易度によって、自分で切るべきかプロに任せるべきかは異なります。
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伐採道具を揃えるのは、「自分でも伐れそうなのに伐採見積り費用が高すぎる!」と思ってからでも遅くないです!
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