太陽光発電のバッテリー(鉛蓄電池)を長寿命化させる使い方

おすすめ記事, 発電・配線

「自作太陽光発電&蓄電システムのランニングコストの大部分は、バッテリーである」

 

ということは自作オフグリッド生活者の間では常識となっていると思われます。

そこで今回の記事では、現代において最もコストパフォーマンスの良い電池とされる鉛蓄電池の特性と使い方を改めて調べることにしました。

 

スポンサーリンク

鉛蓄電池について

原理は中学化学か高校化学かで学ぶはずなので、多くの人は知っているでしょう。
この記事での説明は面倒くさいのでwikipedia読んでくらはい。

1セルあたりの電圧は決まっており、wikipediaによると2.105Vのようです。
つまり、よくある12Vバッテリーというのは、6セルが直列回路となって作られているというわけです。
バッテリーによって容量が違ったりしますが、これは1セルの容量が大きいということで、セルが増えて並列回路になったりしているわけではありません。全て直列回路です。
なので3Vとか7Vの鉛蓄電池というのは、原則存在しません。
2V毎にまとめられたものしか存在しないのです。
中学生の化学実験だろうが、世界に名だたるバッテリーメーカーの研究員が作ろうが、1セル約2Vとなるようです。

ちなみにリチウムイオン電池は3.2~3.7V。

 

他の二次電池(繰り返しの充放電可能な電池)と比較した、鉛蓄電池の特徴を抜粋すると、

  • 安全性が高い(発火しにくい)
  • メモリー効果が無い(浅い充放電で容量が減らない)
  • 大電流も流すことが可能
  • 安価
  • エネルギー密度が低く、小型化が難しい
  • 深放電状態が続くとサルフェーションによって電圧が回復しなくなる

となります。

容量にしては大型となってしまいますからモバイル機器には使用されず、もっぱら据え置きの蓄電池や自動車などに使用されることがほとんどです。
自作太陽光発電などとして使うにはコストパフォーマンスが良いので、こちらの用途でも頻繁に使用されていますね。

 

鉛蓄電池の維持管理

寒い場所に置くと、電解液(水など)が凍結してケースが破損する恐れがあります。
この凍結しやすさは充電率によって異なり、満充電(比重1.280)だとマイナス50℃まで大丈夫ですが、完全放電だと0℃で凍結します。
バッテリーの置き場にも色々考え方があるでしょうが、とりあえず高標高地・高緯度の冬では気温が安定する屋内に設置するべし。

 

気温が高いほど放電容量が多くなり、無負荷状態時の自己放電量も増えます。
バッテリーを保管する場合は無負荷にするのが良いのですがそれでも自己放電が起こりますから、バッテリー関連会社によると夏季は3ヵ月に1回、冬季は6ヵ月に1回以上の補充電をする必要ありとのこと。

 

また、気温が40℃を超えるような場所では寿命が半分以下になったりします。
気温25℃程度がベストであり低温時では放電容量も減るので、極力バッテリーは気温変動の少ない場所に設置するべし。

 

シールド・シール・密閉型バッテリーなら必要ないのですが、開放型(ベント型)バッテリーでは週に1回ほど液面レベルを確認&補充されることが勧められています。
充放電を繰り返していると電解液中のH2Oが電気分解されて減っていきますから。
「メンテナンスフリーのほうが電解液少ないから寿命短い」という記述もあったり「電解液が減らないからメンテナンスフリーのほうが寿命長い」とか記述があったりでよく分かりません。
とりあえず同じ性能なら、補水不要のタイプの方が管理が楽で良さそうです。

ちなみにメンテナンスフリー(MF)と書いてあってもセミシールド型(半開放型)なんてものもあり、こちらは「寿命来るまで補水しなくても良いように設計してるけど、使い方によっては減る場合もあるので補水してください」というものらしいです。紛らわしい!

 

 


寿命を延ばす使い方

放電深度とサイクル回数

二次電池の寿命というのは製造されてからの年月ではなく、サイクル回数が基本となります。
サイクル回数とは放電と充電の回数のことを言い、例えば100Ah容量のバッテリーで10Ah放電して満充電する場合も、100Ah放電してから満充電する場合も「1回」としてカウントします。

しかしこの寿命を表す限界サイクル回数は同じバッテリーなら一定の数値となるわけではなく、放電深度(DOD:Depth Of Discharge)によって異なります。
なので同じバッテリーと言えども、放電深度30%までしか使わない時の限界サイクル回数と50%まで使用する時の限界サイクル回数は違うというわけです。

バッテリーの寿命に明確な基準は無さそうですが多くのバッテリーメーカーのカタログを読む限り、「当初の容量60%までしか満充電が出来なくなる状態」とすることが多いようですね。

 

全てのバッテリーで放電深度毎のサイクル回数と容量比率の関係を表すグラフが閲覧できるわけでは無いのですが、どれでも以下の図のような推移となるのが基本のようです。

バッテリーによって容量比60%となるサイクル回数は異なるのですが、上の例ではDOD75%で約450回、DOD50%で約700回、DOD35%で約1350回となります。

例えば100Ahのバッテリーの場合、寿命が来るまでに合計で以下の容量を取り出せることができるというわけです。

  • DOD75%:75Ah×450回=33,750Ah
  • DOD50%:50Ah×700回=35,000Ah
  • DOD35%:35Ah×1,350回=47,250Ah

上の計算結果を見て分かるように、放電深度を少なめで使うほど寿命が来るまでに取り出せる総量が増えるのです。
なので
余裕を持った容量設計にしたほうがコストパフォーマンスが良くなるというわけです。

「残量低下&電圧低下により電子機器が停止するまで使うのが日常」など、もってのほかです。
早急にライフスタイルや発電・蓄電システムの見直しが必要です。
ただの実験ならおkですが。

まああんまり放電深度と寿命の関係にこだわると際限なくバッテリー総容量が増えてしまいますから、現在の私個人の考え方としては、「無発電時総負荷量の3倍程度の容量とする」ことを一応奨めてみます。
なぜ3倍かっていうのは、3倍にすると平均放電深度が33%くらいになるということと、急速充電が出来るバルク充電は容量の7~8割まででありあまり放電深度が浅すぎると充電速度も遅くなるような気がしたからです。
上記のような考えだと当初予定の3倍のバッテリー容量になって初期投資額が増えてしまいますが、しかしそれで寿命が4倍とかに伸びれば儲けもんじゃないでしょうか?

なぜ発電時の負荷量を考えないか、それは発電コスト自体が低下してきているので発電時はバッテリーが満充電になるのが基本である、と考えているからです。

 

発電力増強の奨め

現代(2018年)では鉛蓄電池の価格が大幅に下がったわけでは無いですが、ソーラーパネルの価格はかなり下がってきたと思います。
「再生可能エネルギーは高コストであるなど、もはや時代遅れの考え方である」と言われるほど技術は進歩してきたのです。
IRENA(国際再生可能エネルギー機関:International Renewable Energy Agency)が2018年1月13日に再生可能エネルギー電源のコスト動向をまとめた報告書によると、「2010年からの7年間で、太陽光発電のコストは73%減少した」とのこと。そしてそのようなコストの低下傾向は今後も続いていくことが予測されています。

対して蓄電池のコストですが、こちらはソーラーパネルに比べたらちょっと複雑ですね。
リチウムイオン電池が更に低価格となってサイクル回数を考えると鉛蓄電池以下となるか、NAS電池の安全性が高くなるか、全固体電池などの次世代電池が台頭してくるか、まだまだどうなるか分かりません。
多少重くても良いから容量比に対するコストが低く寿命が長いことを希望される家庭用蓄電池がこれからどれだけ安くなってくるかは、なかなか予測がつきません。

とりあえず今は一度買ってしまえば何十年も使用できるソーラーパネルが安くなってきていますから、発電力を高めにして日中ではバッテリーが満充電になるのが基本になるくらいにするのが良いでしょう。
発電力を上げ過ぎると太い電線や頑丈なチャージコントローラーが必要となってきますから、低コスト製品が使用できる範囲内で最大のパネル出力を基本とするのが良いんじゃないでしょうか?

 

次回の記事では独立型太陽光発電用バッテリーの選び方を書いてみたいと思います。

 

参考文献

NISCO
http://www.battery.co.jp/tech/pdf/pdf_tech_01.pdf
http://www.battery.co.jp/tech/pdf/pdf_01.pdf

電池工業会
http://www.baj.or.jp/car_battery/car06.html

電気設備の知識と技術
https://electric-facilities.jp/denki9/chiku.html

5