週末・八ヶ岳田舎暮らし

2015年8月8日エッセイ・ドキュメンタリー

目次

 

スポンサーリンク

・定年退職後に八ヶ岳の麓に家を建てる

・熱や金額の数値化が多い

 

 

定年退職後に八ヶ岳の麓に家を建てる

生まれも育ちも東京のエンジニアが、定年退職後に縁あって八ヶ岳の麓に新しく家を建てて、その暮らしぶりを描いたエッセイとなります。
タイプとしては、金額に少し余裕がある定年退職型で、東京と往復して週末を田舎で暮らすという感じでしょうか。

元々著者は本が好きなようで、膨大な書物の保管に困っていたようです。
東京に新しく土地を買おうと思っても、バブル時代ですのでほんの少しの面積でも膨大な金額がかかるようでした。
そのため、土地代が安くて、書物の保管に良い気候である冷涼で乾燥した場所に、新しく土地と家を建てて暮らしてみたい、と思ったのが田舎暮らしのきっかけのようですね。

取得した土地の面積は、500坪強
新しく建てた家は、母屋の建坪41坪、離れ11坪
OMソーラーシステムという太陽熱循環システムや風呂の垢を自動で濾し取る循環システムも設置しています。
総額は4,974万円となったようです。(土地代を抜いて)
ちょうどバブルの時代くらいに田舎暮らしを始めたようなので、今とは少々金銭感覚が異なるかもしれませんが、経費の目安にはなると思います。

 

 

熱や金額の数値化が多い

元エンジニアだけあって、数値化が多く他の田舎暮らし本には無い考え方があって、面白いです。

例えば、土地を探す際、書物にとっては乾燥した場所が良い、冬の寒さを和らげるために冬季の日照時間が長いほうが良い、という条件をかなえるために気象庁の各地点の平均気象データを閲覧して、どの辺りが良いかを決定したようです。

家と熱の関係にもかなりエンジニアとしてのこだわりがあるようで、熱貫流率の表やOMソーラーのための日射量や集熱量の表なんかもあります。
ここまで計算しなくても…と素人の自分は思うのですが、やはりこのような計算をしたほうが、大体の予想ができるのでその効果や対策を考えるのに役立つのでしょうね。
なお、著者の家とOMソーラーシステムの関係上、冬季に必要な補助熱量は灯油で換算すると月103Lとなり、金額としては約6,000円になるようです。
冬季の水道の凍結防止には、電気を使っているようですが。

薪ストーブも使っているようですが、薪の入手方法にも色々考えておられます。
ウイスキー工場の廃材と2トントラックでもらったり、代用薪として新聞紙を溶かして固めてみたり。

現代(2015年)でも東日本大震災を筆頭にして日本には電気の問題も多々ありますが、1979年の石油危機でも電気の問題が多く叫ばれたようです。
エネルギー効率のことをよく知っている著者にとっては、多種多様なエネルギーに変換することが容易な電気エネルギーを最も低級な熱エネルギーに変換することは、あまり許容できないことのようです。
ソフトエナジーパスという分散型エネルギー補給システムが、田舎暮らしには向いていると思います。

全てを集約・一般化して効率よくこなす都会とは対照的に、田舎は分散・個別化のシステムとなります。
それは田舎暮らしを始めようとする人たちにも共通するというか、個人のやりたいことも田舎のほうでは多く出来ると思います。
ただそこには一般化されていない問題も多くある分、面倒くさいことも多いようですが、一つ一つ問題を解決していければこれほど面白い生活は無いように思えます。

本には他にも近所の人たちのこととか、野菜の栽培のことなんかも少し書かれています。
ギスギスせずに、のんびりと流れゆく雲を眺めるような生活の様子が素敵です。

 

詳細な目次

田舎暮らしを決意するまで プロローグ

Ⅰ 八ヶ岳の麓へ

1 こんなところに住んでみたい
2 土地をもとめて
3 眺望と自然環境
4 自然の大切さを教えられた話


Ⅱ 資金計画

5 うまれてはじめての借金
6 返済計画をどう立てるか
7 建築資金の調達
8 こんなにちがう契約通念
9 支払いについて

Ⅲ 冷涼地で暖かく暮らすには

10 冬の寒さをどうのりきるか
11 こんな工夫をしてみた
12 断熱と採光
13 太陽エネルギーで暖房する
14 床暖房とOMソーラーシステム
15 補助暖房を考える ソフトエナジーパス
16 暖房、その成功と失敗

Ⅳ 住まいの工夫

17 上下水道の凍結防止策
18 井戸を掘る
19 合併処理層 寒冷地の水洗便所
20 キッチンはむずかしい
21 温泉気分
22 リビングとダイニング
23 寝室と雑魚寝部屋
24 書斎について語ろう
25 納戸に暖房はいらない
26 離れの和室

Ⅴ 暮らしの工夫

27 たべものの買い出しと保存
28 生ゴミ堆肥づくり
29 焼却炉と燃えないゴミ
30 廃物利用のこころみ
31 薪ストーブの効用
32 薪の入手法
33 代用薪をつくる

Ⅵ 自然にかこまれて

34 森のバルコニー
35 星月夜
36 日だまりのリス
37 クレッソンの水流
38 ハーブ十二カ月
39 休耕田を借りる

Ⅶ いなか暮らしの実際

40 定住かウィークエンドライフか
41 日常のメインテナンスさまざま
42 地元の役場や近所との付き合い
43 諸経費一覧
44 いなか暮らしをつづけるために

あとがき

0