人生で初めての、鹿の解体

未だに罠(1基)に獲物が一体もかからない2019年2月、近所に住んでるおじさんから電話がかかってきました。
というわけで、鹿を解体して肉を得る、初めての機会が訪れました!
動物の解体は、人生で初めての経験です。
魚くらいならさばいたことはありますが、哺乳類は初めてです。
動画と本で少しだけ勉強したことはありますが、碌な道具も知識も無い状態であることに変わりありません。
ひとまず、失敗覚悟で挑戦してみることにしました。
※解体画像あり
血や内臓を見たくない方は読み進まないように!
現場での解体様子
おじさんから教わった場所、アスファルト道の奥の空き地、ありました。
鹿を間近で見たことはいくらでもありますが、実際に触るのは奈良県に修学旅行行った以来です。
死んだ鹿を見るのも初めてです。
朝早い寒い時間でしたが、先客はトンビ2羽。
近づくと飛び去っていきましたが、解体中はずっと上空で旋回してたり、木に留まって様子を見られていました。
「早くどいて俺に食わせろ!」
と言われているような圧力がありましたw
ひとまず草むらの中では作業がしにくいので、アスファルトの上に近くにあった廃波板を置いて、その上でやることにしました。
動画などでは吊るして作業が多かったですが、近くに手頃な樹がなかったし面倒だったので、地面に置いてやることに。
小屋から持ってきた装備は、防水手袋、汚れても良い服、三徳包丁、鋸、ビニール袋数枚くらい。
上手い人は小さなナイフで全て精肉出来るようですが、素人は鋸もあったほうが骨の切断が出来て作業がしやすいらしい。
トンビに食い荒らされたからなのかおじさんが取った時に切っておいたからなのか、前足2本が簡単に取れそうだったので、まずこちらを外すことに。
獣に包丁を入れていくのは初めてですが、思いのほか道徳的な抵抗がありません。
「内臓を傷つけないように…」という慎重さから恐る恐る切りはしていきましたが、抵抗はそういう、技術的なものだけでした。
手で骨の場所を探りながら、胸から外せそうな場所を見つけて、包丁で切ったら前足が取り外せました。
さて、解体は最初に内臓を摘出する、ということは知っていたので、慎重に腹を裂いてみます。
しかし取れそうな後ろ足がちょっと邪魔だったので、半分ほど割いた後、前足同様の作業でひとまず後ろ足2本を取りました。
モモ肉が取られたものなので簡単でした。
すね肉くらいしか付いてませんが。
動画ではサッと腹の中心を裂いていましたが、素人にはどこが中心なのか、1000円の包丁でも簡単に裂けるものなのか、不安。
毛皮を裂くのにもおぼつかなくて、毛が抜けて肉に付いたりして、不衛生。
ひとまず、腹と背が割かれていることで、皮が取りやすそうになっていたので、皮を取りました。
三徳包丁で上側へゆっくり腹を裂いていくと、だんだん内臓が出てくるようになりました。
しかし、臭いです。
この鹿を捕らえた人は槍で止めさししたらしいし、大腸らしきものが少し破れていたものもあって、うんこ臭いです。
今回は食肉を取るための解体ですが、食欲を無くしてやる気もちょっと失う…。
解体のお手本では、肛門近くを切ってから喉近くを切って内臓を全て外すようでしたが、肛門辺りの構造が分からなかったので、まず上部から外すことに。
肝臓や腸は内壁に軽く付いていただけだったので簡単に外せていけましたが、第一胃?辺りは背骨と強く繋がっていました。
内臓を手で押さえ、肉を引っ張りながら切ったら、背骨下部と肛門が繋がっているだけに。
うんこが付いた下半身はあまり触りたくないし旨そうな肉も少なかったので、あばらの下部の背骨を鋸で切断。
肉の付いたあばらを取ることにようやく成功。
食道を包丁で切り、首の骨を露出させて鋸で切切断。
頭部、あばら、4本脚に解体完了です。
そのままバイクで持って帰るのは大変なので、現地で小さくしておきます。
あばらは背骨が必要ないので、鋸で無理矢理肋骨と背骨を切断。
脚はすね肉を包丁で切って肉だけを取り出します。
内臓、骨、毛皮などの残滓は空き地に戻します。
今か今かと待っているトンビが食べることでしょう。
初めて見た時はそこそこの大きさに見えた鹿ですが、素人が解体して持ち帰ることになった肉は、袋2枚分のみ。
頭部も持ち帰ってみたので、袋は3枚映っています。
たったこれだけの作業ですが、初めて作業する素人だったので、2時間ほどかかりました。
帰宅後
帰宅後、まずは使った道具を洗い、埃や毛が付いた肉を水で洗いました。
衛生的な洗浄、とは全く言えません。
頭部の頭蓋骨を取り出してみたかったので持ち帰りましたが、大きな寸胴を持っていなかったので煮ることが出来ません。
試しに、小屋からそう遠くないところに放置してみました。
鳥たちがついばんで骨だけになるのかな…と思って。
次の日の朝、見に行くと無くなっていました。
タヌキなどが持ち帰ったのかも。
下処理の方法が分からなかったので、ひとまず乾燥網で保存。
勉強しながら、ゆっくり下処理しながら食べていこうかと思います。
この小屋のある山では、今までほとんどカラスやトンビは見かけませんでしたが、鹿の解体現場には大量に集まっていて、ついばんでいるようでした。
また、自分の身体や小屋からも血肉の臭いがするのか、帰宅後でも小屋近くでカラスをよく見かけるようになりました。
その日の深夜、小屋近くでやけにゴソゴソと音がするなあと思って見に行くと、タヌキがすぐ近くをうろついていました。
血肉の臭いに惹かれてやってきたのか。
感想
解体は初めてでしたが、まだまだ技術が未熟すぎることを実感。
上手い解体とは、衛生的で、歩留まり(食肉量)良く、素早いことでしょう。
今回は全て失格ですが、これから習熟していきたいと思う。
道徳的抵抗があまり無かったのが、少し意外でした。
難しい魚を捌いているだけのようで、内臓のグロテスクさとか、同じ哺乳類としての共感みたいなのはほとんど感じず。
年を取ったから、感受性が低くなったとか?
もっと幼ければ、トラウマになるくらいの強烈な印象を受けていたんだろうか?
まあ、自分で実際に止めさしをする時とかは、もっと何か感じることがあるでしょう。
自分の未熟さもグロテスクさも想定内でしたが、臭いは意外でした。
ここまで血と肉の臭いがして、食欲を失うものなんだと。
解体が終わって帰宅してからも、残るものなんだと。
食欲が無い状態では、さっさと終わらせたいがために、歩留まりの悪い解体をしてしまうかもしれません。
腹減っている時にやったほうが良いんだろうか?
しかし血肉の臭いは他の動物を大いに引き付けるようで、冬の野外に放置していると、腐敗やウジ湧きよりも他の動物たちに食べられる方が早いよう。
なんにせよ、いい経験になりました。
自分が狩猟をしようとしている理由は、動物を殺したいからでは全くなくて、肉が大量に欲しいからというのも少し微妙。
「狩猟をしたら自分はどうなるか?」「ヒトが狩猟をするという、行為を実感する」みたいな、精神的なことが大きいかな。
今回の特に楽しくもない解体の経験で、狩猟自体が嫌になったわけではないです。
しかし、初めて止めさしをするときは何かしらの心の変化があるのかもしれない。
罪悪感を感じるのか、感じないのか。やるべきだと思うのか、思わないのか。
狩猟を今後も続けるかやめるかは、そのとき決まると思います。
ちなみに今回参考にした本↓
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コメント一覧
肉を喰らうということを残酷だと思うのは人間だけなのか。
動物であれ植物であれ、命を喰らわなければ命を繋げない。
スーパーで売ってる肉を当たり前のようにカゴに放り込んで何も考えずに食事を配しているが、そこに伴う痛みや恐怖は 喰らう者も共感せねばならないものなんだなとつくづく気付かされました。
感情を持つ人間としては、感謝を持って食すということを忘れはいけないですよね。
美味しく食してあげて下さい。
私も生きるために必要な分だけを無駄なく美味しく頂こうと思います。
これからの記事も楽しみにしています。
頑張ってね。
調理方法はいろいろ試してみて、取った肉の分は全部食べてみました。
売っている精肉は食べ物として優れているかもしれませんが、野生獣の肉は個性があり、だからこそ食べるときにその個体の命とかを感じました。
自分は生かされているという実感、感謝せざるを得ません。