伐採・伐倒方向を調整しよう!ちょっと珍しい方法のまとめ

2017年7月23日おすすめ記事, 伐採

自分の知っている、伐採方向の調整方法について、小ネタを少しまとめておくこととします。

 

この記事では基本的な受け口・追い口の作り方、クサビの打ち方などは載せていません。
まあ基本的なことですし、ていうかあれはあれで実は色々やり方あったりしますからね。
意外に奥深いものなんですよ。

また、樹上伐採に関することもこの記事には載っていません。
全く勉強出来てないし、ツリークライミング技術はまた次元の違うものですから。

というわけでこの記事では、今のところ以下の項目をご紹介します。

 

 

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油圧ジャッキによる重心調整

基本的に斜面に生えている樹木は、谷側に重心があります。
ですので例えば、斜面に生えている大径木を斜面上方向などに倒したい場合は、物凄く強力な重心調整方法が必要となります。
小さなクサビだけでは樹体を起こす量が少なく、大型のクサビを用いても起こすことが出来ない場合があります。

そんな困った状況を克服する方法の一つに、油圧ジャッキを用いた伐採というものがあります。

使用する油圧ジャッキは、予備タイヤ交換のために車載もされる、小型のダルマジャッキです。
使用荷重は色々ありますが、車用と併用できるものが良いのではないでしょうか。
出来ればジャッキアップ時の安定性確保のため、先端に鉄板を噛ませておいたほうが良いでしょう。

 

油圧ジャッキの使い方は、以下の図のとおりです。
下記の参考文献の図を引用させてもらいました。

ジャッキの据え付け位置は、立木が傾いている方向(重心方向)と一致させます。

手順としては、受け口切る→つる多めに追い口切る→クサビ打ち→突っ込み切りでジャッキ置き場確保→ジャッキアップとなります。

このような油圧ジャッキ伐採だけでも重心調整が難しい場合は、更にチルホールなどの牽引具を併用するとさらに調整が上手くいくと思われます。
知っておいても損は無い技術なのでは?

参考文献
油圧ジャッキを利用した天然林伐倒の考察http://www.rinya.maff.go.jp/chubu/gijyutu/pdf/pdf/h03_079.pdf

 

枝打ちによる重心調整

スギやヒノキなどのようなスラっと伸びる針葉樹では気にしなくても良いのですが、枝を張りやすい広葉樹やマツなどでは重心を把握するのに枝の位置や大きさを気にする必要があります。

↑の画像では綺麗に円形に枝を張っているので、重心も分かりやすいです。
しかし実際の木はもっとランダムな枝の配置や大きさになっていますので、経験値が不足している時では大変わかりづらいだろうと思います。

そこで重心を伐倒したい方向に確実に配置したい場合は、伐倒前に伐倒方向以外の枝を切除しておく必要があります。

 

 

高枝鋸や梯子などによる木登りにより、横に張っている枝を伐ります。
あまり上に伸びている枝は伐る必要ありません。
重心調整にあまり影響は無いし、切った時に自分のほうに落ちやすくて危ないですからね。

至極単純な原理ですが、伐採の教科書にはほとんど載ってないので意外に盲点な方法だったりします。
少なくとも伐採初心者だったころの自分は、このことをちゃんと意識することは無かったです…。

 


牽引具と控えロープの併用

重心とは逆の方向に木を倒す場合、チルホールを始めとする牽引具で引っ張ることも多いかと思われます。
しかし一本だけのチルホールだと、(固定点にもよりますが)大きく方向がずれてしまう場合があります。

そこで、更に伐倒方向を確実にするために、控えロープを数本用いる方法があります。

↑の画像は上方から見た、伐採予定木とその重心と伐倒方向の位置関係を表しています。

このまま左にチルホール一本で牽引したとしても、最大75°前後(値は適当)方向がずれる可能性があります。

 

そこで、受け口と追い口を作る前に、数本のロープで伐採木と固定点を繋いでおきます。

ロープの長さが固定されていれば、固定点を中心としたロープの長さの半径の円内に伐倒範囲が限定されます。
ロープを2本以上用いた場合、伐採木はロープが千切れない限り、その円が重複するような場所にのみ倒れるようになります。

なお伐採木がすでに立っている場所も重複した円内ですので、このまま受け口と追い口作っても、伐倒方向には倒れません。

 

最後に、牽引具を伐倒方向側に設置します。

これで重心とは逆方向への伐採準備が整いました。
後はいつも通りつるを多めに残して、牽引していくと、綺麗に倒れるかと思います。

 

 

使用するロープは伐倒中に千切れないように、太めのものを用いましょう
ホームセンターでも手に入りやすい径12mm程度で大丈夫と思いますが。

実際は固定点の有無や重心方向などによって、もっと複雑な配置、計算になります。
場合によってはロープ1本で十分なときもあれば、3本以上用いるときもあるでしょう。
まあ計算が完璧に出来れば特殊伐採業者レベルになりますので、最初は少しずつ経験値を溜めていくようにしたほうが良いんじゃないでしょうか。

 

 

ワイヤーを引っ張るチルホールにも色々ありますが、自分は安価なものを使っています。
今のところ、大きな問題はありませんよ!

 

 

あて材を考慮した根張り切り

CAUTION!!

※この技術は学者による研究・プロによる証明が(多分)為されていない技術であり、自分の仮説に過ぎません。
盲目的に信じるのはやめましょう。

 

 

樹木には自重を支えるために、「あて材」というものを形成します。
そしてそのあて材は、基本的に針葉樹と広葉樹で仕組みが異なります。

※駄コラ多めでご説明します。

 

↑画像は、斜面に生える針葉樹を表しています。

針葉樹では基本的に「圧縮あて材」というものを斜面下方に構成し、斜面下方から樹体を押すようにして自重に耐えるようになっています。
ですので針葉樹では斜面下方の根張りが発達しやすい、とされています。

 

対して広葉樹では「引張あて材」というものを形成し、こちらでは針葉樹とは逆に斜面上方側からロープで樹体を引っ張るようにして支えるようになります。
ゆえに引張あて材は斜面上方側に分布しており、広葉樹では斜面上方に根張りが発達する、と考えられています。

(実は具体的なあて材分布域を調べた研究例を見付けることが出来なかったので、推測多めでお送りしています…)

 

以上のあて材の仕組みを考慮すれば、平地に生えている針葉樹では↑画像のように、根張りがあるところからそれぞれ押し合うようにして樹体を支えているのではないかと考えられます。

ゆえに、伐倒方向の根張りのみを切ることで、他の根張りが樹体を押して重心が移動すると考えられます。

 

 

平地に生える広葉樹では、根張りがある方向からそれぞれ引っ張って樹体を支えていると考えられます。

 

針葉樹とは逆に広葉樹では根張りが引張るようになっているので、伐倒方向の根張りのみを残すことで重心が根張りの方向に移動するのではないかと思われます。

 

以上のことを考慮して、コナラ(広葉樹)を伐採するときに根張り切りしたことがあります。
元々重心が分かりやすいものだったからか、まあ綺麗に倒れてくれましたが、この根張り切りの効果もあったのではないでしょうか。

 

 

というわけで、針葉樹では伐倒方向の根張りを切り、広葉樹では伐倒方向以外の根張りを切ると、重心調整がしやすいのではないかと自分は考えています。

まあこれは単なる仮説ですので、暇な林学者はちょっと証明してみてくださいよ!
ていうか広葉樹伐採の研究例少なすぎる!

 

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