穴掘り型の外トイレ(ピット式トイレ)の自作と運用

2017年3月24日山の暮らし

ピットラトリン自作

電気も水道も無い山に小屋を建てて暮らしています。

今回の記事は、生活する上では大事な「トイレ」のことです。
人間も生き物ですから、食べるのも出すのも必然。
だから、トイレも必要不可欠です。

古今東西、トイレには様々な形態がありますが、自分は発展途上国でも使われる「ピット式トイレ」としました。

 

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(追記)ピット式トイレとは

ピット式トイレとは、英語ではピットラトリン(pit latrine)とも呼ばれる、掘った穴の中に糞尿を貯める原始的なトイレです。

基本的な構造は以下のようになっています。

かなり単純ですが、野原に糞尿を撒き散らすよりも衛生的になります。
ハエなどによる病原体の移動や広がりが無くなります。

必要な資材や労力がかなり少ないため、発展途上国の一部ではこのようなトイレが用いられています。

ただ、地下水汚染がデメリットであるため、飲み水の採取場近くには設置しないのが基本です。
WHOによれば、井戸や川から10m離すのが基本。
穴の深さは3mとし、糞尿が0.5m深さまで溜まったら、土で埋めて新たなトイレを作る必要があります。

(参考:wikipedia『pit latrine』

 

lixil ピットトイレ

また、LIXILは発展途上国用の安価な簡易式トイレ「SATO」シリーズを開発しています。

上の写真は、Vトラップモデル。
2つのピットを作り、1つが一杯になったら弁を切り替えてもう1つを使います。
もう1つが一杯になるころには、最初のピットに溜まった糞便が堆肥化して取り出せる、という仕組みになっています。

 

簡易な外トイレを作りたい場合、以上のような発展途上国用の安価なトイレが参考になりそうですね。

 

自分が作るピットラトリンの概要

当初、小屋の中に設置して夜や天気の悪い時に使う『内トイレ』と、天気が良かったり外で作業しているときに使用する『外トイレ』の2つを作ろうと考えていました。
トイレを1つだけにすると、そのトイレに便が集中して処理するべき量が多くなるので、構造も少し難しくなります。
水道を引いてない山の中でちゃんとしたトイレを作るとしたらコンポストトイレやバイオトイレと呼ばれるものになりますが、温度・空気・臭気の調整などが結構難しく、自作するとなるとかなり気合いを入れたものにしなければなりません。

というわけでまずは簡単に作ることの出来て、内トイレの便量を減らすことの出来る外トイレを作ることにしました。

 

基本的な構造は、掘った穴の上に洋式便座を取付、テントで囲って雨風に悩まされずに排泄できるようにします。

テントは、既に所持している底面の無いタイプのテントです。
購入するなら、ツェルトやエマージェンシーテントなどが良いかも。
こういうのなら、簡単に設置や移動が出来ます。
木材や波板を使ってトイレ小屋を作ると剛性があって安定感があるものになるでしょう。
でも、小屋そのものを移動させることが難しくなります。

ピット式トイレ製作の様子

介護用ポータブルトイレを使用

2017年2月13日、注文していたポータブルトイレが届きました。
和式トイレみたいにうんこ座りのほうがきばりやすいですが、やっぱり洋式のほうが楽だから、洋式便座にしました。

購入したのは介護用のためか、内側に便を回収するためのバケツも付いています。
でも、そのバケツを外すと便を地面に落とすことが出来ます。
ピット式トイレにおススメ!

裏面はこんな感じ。
平坦な場所での使用が前提となっているのか、地面に接する便器の縁はちょっと頼りない感じ。

寸法は上の写真→のようになっています。
幅41cm、奥行49cm、便座まで高さ37cm。

ひとまず、この底面面積くらいの穴を掘る必要があります。

 

整地・穴掘り

ピット式トイレは地下水汚染の危険があるため、どこにでも設置できるわけではありません。
井戸や川から遠く、地下水位以上の場所を選ぶ必要があります。

自分が選んだのは、小屋から近くて、平坦で、尾根上の地形の場所。
ここなら使いやすいから良さそうです。

ひとまずレーキなどで枝葉を除去。

つるはしとスコップを使って、穴を掘っていきます。
穴が深ければ深いほど移動の頻度が少なくなります。

でも、深い穴を掘るのは大変だし、自分一人しか使わないし、深すぎると分解も遅くなりそうなので、浅めにしました。

穴の面積は適当ですが、あまり広く掘ると便座土台の設置が大変。
幅は、トイレの底面くらいにしておきました。

 

スコップでそれなりに深く掘りました。
できるだけ深い方が満タンになるまでが長いですが、どうせ満タンになったらちゃちゃっと動かして終了なので、掘りにくくなったところで止めました。

 

便座土台はOSB(合板)

トイレの土台となる板を敷きます。
ぐらつかないよう、なるべく水平に。

なお、写真では石膏ボードとなっていますが、すぐに割れたので結局OSB(合板)を用いました。

便器を設置するとこんな感じになります。
便が飛び散ると板は汚れるでしょうが、移動するときに少し洗えば再利用可能です。

 

テントで囲う

もらいもののツェルト型テントを、便座の上に立てたら完成です。

これで風雨にも影響されないし、座ってうんこができます。
小便のみしたい場合は適当な場所で立ちションすれば良いのです。

 


ペーパーホルダー自作

100均にペーパーの芯だけ売ってたので、ペーパーホルダーを自作しました。

芯の両端に突起があるので、その径くらいの穴を杭に開けます。

2本の杭を地面に刺して、芯を杭間に取り付け。
幅が決まったら、固定用の横木をビスで取り付けたら、完成!

 

(追記)便座固定方法の改良

次の年の2018年3月20日、1か所目の穴がいっぱいになってきたので、2か所目に移ることに。

板の上に置いただけだと座った時に便座がぐらついていたので、2か所目では便座の固定を改良してみることに。

考えて編み出したのが、地面に杭を差して、ビスで便座と固定する方法。

購入した便座は陶器ではなくプラスチック製ですから、ドリルで簡単に穴を開けられます。
木製自作杭を4本打ち込み、杭の間に便座を設置。
便座裏側からインパクトドライバーで、ワッシャー付きのビスを打って、便座本体と杭を繋ぎます。

試しに座ってみたら、ぐらつきは無くなってくれました。
やはり土の上に何かを固定するときは、杭を使うのが最も手っ取り早いし楽でしょうね。

かなりシンプルな構造ですが、意外になかなか思いつかない構造でしたよ…

 

運用について

トイレットペーパーは燃やす

使用したペーパーは、テント内で燃やしています。

便座脇に金属製の網を置いて、その上に溜めてライターで毎回燃やしています。
網を使っているのは、地面からの湿気を防ぎ、燃えるための空気を通すため。

紙をテント内で燃やすと、紙の処理だけでなく、煙による消臭や防虫になります。
特に消臭効果は大きく、便の臭いがほとんど消えて煙の臭いのみになります。
ピット式トイレ以外にも使えそうな方法ですよ!

 

携帯ウォシュレットで紙の使用を少なく

手動の携帯ウォシュレットでお尻を洗って、紙の使用量を減らしています。

紙を使う量が減ればお尻を傷めることも少なくなるし、資源の節約にもなります。
これはピット式トイレ以外でも言えることですが。

 

ただ、購入したポータブルトイレは小さめなので携帯ウォシュレットが少し使いにくいです。
携帯ウォシュレットを使いたいならやっぱり和式便座にするか、大きめの洋式便器のほうが良かったかもしれません。
まあ安かったし、いっか!

 

臭いや虫が気になるなら土や落ち葉をかけるべきだが…

ピット式トイレでは臭いや虫が気になる場合は、使用後に土や落ち葉を掛けると改善できます。

でも、そうすると穴がすぐに埋まってしまうのがデメリット。

自分は臭いや虫が出やすい夏は山にいないから、特に何もせずペーパーを燃やした時に出る煙だけで対処しています。
家族など、2人以上で使うならもうちょい配慮が必要かもしれません。

 

(追記)外トイレだけで良いんじゃない?

山小屋暮らし1stシーズンに作って使い始めて、3rdシーズンまで全く同じ仕組みで使い続けています。

特に不都合が無く、維持管理も楽なので、もっと先進的なトイレにしようとは考えていません。

小屋の中に内トイレも作ろうと考えたこともありましたが、結局やめました。
その過程は以下の記事をご参照あれ!

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