『感想』山に生きる人びと~日本にも非定住文化は存在していた

実用書・一般書

山に生きる人びと

著 者:宮本常一
出版社:河出書房新社
出版年:2011年(原典は1964年)

 

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内容

サンカやマタギや木地師など、かつて山に暮らした漂泊民の実態を探訪・調査した、宮本常一の代表作初文庫化。
もう一つの「忘れられた日本人」とも。
没後三十年記念。

(河出書房新社より)

 

感想

1981年に亡くなるまで日本各地を渡り歩いて膨大な記録を残した、民俗学の巨匠・宮本常一さんの書いた本です。
彼の幅広い知識と経験の内、古代~近代までの山で暮らす人々についてまとめたのがこの本。
この本は一般書であり、学術書や論文などに比べると読みやすいです。

一般的とされた平野の水田百姓たちとは全く違った生活を行っていた人々の生活や人生を垣間見える、非常に素晴らしい良書でした。

 

面白くて知らない記述があったので、少し自分なりに覚書をしておきます↓

 


人々は何をしながら山で生きていたか

基本的には、資源採集型生活・経済を営んでいました。

例えば、以下の仕事など。

  • 狩猟
  • 木材の伐採・運材
  • 木工・ろくろ木地(お椀、杓子、柄など)
  • 漆、茶、紙などの林産物生産
  • 鉱業
  • 炭焼き

特筆すべきことは、資源採集型のため一生同じ場所に定住して仕事する割合が少なく、資源を求めて漂泊していたこと。
同じ地域内で森林を使い回していくのではなく、別の国にまで働きに出る人も多かったのです。

特に昔は現代よりもエネルギーや資源に林産品を頼る割合が多く、すぐに良材を取りきってしまっていたよう。
しかし杣(材木生産林業)や鉱業のように技術が必要な仕事も多く、現地民が副業で山林資源を使おうとするより、専門の人々が採集・利用しながら渡り歩いていたようです。

人々は材を使い切るまでは、簡単な小屋を建てて暮らしています。
林産物を売って里の物を得る交易に頼っていましたが、運搬手間が大きいので、木材以外では出来るだけ小さくて価値のあるものを生産。
薪ではなく炭を、木工材料ではなく木工品を。

 

明治時代になってからは勝手に伐採することが出来なくなったので、定住するように勧められて、そのような漂泊民はほとんどいなくなりました。

 

山の生活

岩塩が採れない日本では、山で生きるには交易が必要不可欠です。
海で取れる塩は生きるのに絶対必要であり、そのため海から山へと続く『塩の道』が全国各地に存在。

ただ、交易品である里の米を購入して食べるのは難しいほど貧しく、出来る限り自給自足をしようとしています。
焼畑を行い、ソバ・アワ・ヒエ・ダイズ等を輪作して生産。
サツマイモとジャガイモが入ってくるまでは食料に乏しく、飢饉の時は乞食となることも多かった。
(ちなみに『畑』は焼畑の意。『畠』は焼いてない畑)
秘境に潜む落人たちは、平野の文化で生きようとするためか、苦労してでも山の中で水田を作っていた可能性が高いようです。

 

一時的に暮らす小屋は、二又の木(マタギ)を柱にした三角屋根の草葺き。
イメージとしては以下の動画のような感じ?

 

非定住文化は日本にも存在していた

この本は、現代では少なくなった材木生産林業以外の林業や、山の生活を知れる良書でした。

教育が行き届き、書物や文化を多く残した定住系日本人(水田百姓・町民・武士)に比べると、山に生きた人々の記録は少ないです。
だから教科書などにもほとんど登場せず、知らない人も多かったでしょう。
でも、確かに彼らのような、モンゴル人のような資源採集型漂泊民が日本にも存在したことは忘れてはならないと思います。

また、この本を読むと狩猟としてイノシシやシカを多く獲って、農産物の被害を防止したり肉を採取して生活していたことも良く分かります。
「日本人は農耕民族、欧米人は狩猟民族」などという俗説もありますが、それは全くの嘘っぱちですね。
一体どこから広まったのやら。

 

山で生きることについて勉強している自分ですが、この本を読んでようやく自分は民俗学に興味があることに気づけた気がします。
昔ながらの生活を現代に取り入れようとすると、失われた過去への憧憬も感じます。

山に生きる人びと (河出文庫)

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