田舎暮らしに殺されない法

エッセイ・ドキュメンタリー

憧れだけの田舎暮らしに対する批判

この本は長野県安曇野に住む小説家、丸山健二さんの書いたもので、ジャンル的にはおそらくエッセイになるんでしょうかね?

内容のほぼ全ては、定年を迎えて何となく田舎暮らしを始めようとしている団塊の世代の男性に向けた、憧れだけの甘い考え方に対する批判と忠告となっています。

本業が小説家なので読みやすい文章なのですが、図やグラフなどが一切無いし、他人へのインタビューなども無く、一貫して作者の忠告が続きます。

読んでいると、ずっと批判ばかりが続いていくので読むのが飽きてくるし、「結局どうすりゃいいのか」と問い詰めたくもなることもありました。
特に「犯罪者が押しかけてきたら?」という対策に対しては、まるで誇大妄想のような内容が続き、少し著者の精神状態が心配になるほどでもありました。

田舎暮らしでの付き合いを行うにあたっては、まず第一にその土地柄を知ることが大事だ、ということが著者の言い分ですが、特にこの本にはデータに基づく具体的な土地柄の説明もありません。
数字を出さない言葉だけの抽象的な表現が許されるならば、どのような結論でも導くことが出来る、と私は考えています。
そのような意味では、この本は特に具体的な役立つ知識が載っていないように思えます。

 

ただ、著者が考える田舎暮らしを始めるときに必要な心構え、というのは個人的にも同意見です。

田舎暮らしで求められることは、自分のことは自分の力でやるという強い心組みと体力です。
実際に移り住んでしまってから都会の便利さと比較してぼやいてみたところで始まりません。
何でも自分でやってのけるということが楽しみのひとつになるようでなければ、わざわざ不便な土地で生きる意味がないでしょう。

適当に田舎に行って田舎に自分を幸せにしてもらう、なんていう他力本願では理想は叶えられないでしょう。
清濁全てを自分で受け止め、自立した自分による確固たる意志を持った田舎暮らしこそが、成功の秘訣なのでしょう。

 

本の目次

はじめに

その前に、「自立」しているかを問え
確固たる「目的」を持て
「自然が美しい」とは「生活環境が厳しい」と同義である
年齢と体力を正確に把握せよ
「田舎暮らし」を考えるなら、まず酒と煙草をやめよ
「孤独」と闘う決意を持て
「妄想」が消えてから「現実」は始まる
田舎は「犯罪」の巣窟である
田舎に「プライバシー」は存在しない
「付き合わずに嫌われる」ほうが底が浅く、「付き合ってから嫌われる」ほうが数倍も根が深い
「第二の人生」について冷静に考えよ
「老後の現実」を直視せよ
あなたを本当に救えるのは、あなた自身である

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