QGISで地籍図のジオリファレンスと境界データ作成

調査

背中に出来た粉瘤が痛くて作業にならん年末年始にやってみようとしたのです。

 

目標

・現状で自分の山の境界が分かる唯一の証拠である地籍図(紙媒体)をGISデータ化する。
・境界データを作成。

 

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地籍図とは

地籍調査の成果として作成される地図であり、地籍調査後に法務局に送付されて法務局備付地図(公図)となるもので、土地の面積や距離等は記載されていません。

一方、地積測量図とは、登記申請を行う際に土地所有者が法務局に提出する図面であり、一筆(または数筆)の土地についての測量の結果(面積・求積方法など)が記載されています。当該土地の所在地を管轄する法務局が保管していますが、地積測量図がない土地も多くあります。

横浜市

自分の場合、地籍図は契約書に載っていました。
自分の所持している土地だけでなく、その周辺の地番とか道路縁、昔の歩道(?)なんかも載ってます。
地図外にも色々な属性が載っており、GISデータ化するのに必要な欄は、「座標系番号又は記号」、地図の右上と左下に載ってある「座標」ですね。

「座標系番号又は記号」の欄にはとあるローマ数字が載ってありました。
まあおそらく座標値的に見ると、平面直角座標系の番号でしょう。
しかしこの地図が作られたのは昭和59年。
今使われているのは測地系JGD2000ですが、これは2001年の測量法改正によって日本だけの測地系から世界に合わせた世界測地系になったとかなんとか。
東日本大震災の地殻変動で2011年以降は「JGD2011」が東日本の一部地域で使われていますが、私は西日本に住んでいるので今まで通り現在の測地系は「JGD2000」で問題ないでしょう。

さて、ではJGD2000が使われる前は何が使われていたかというと、東京天文台の緯度・経度を基準としたものが使われていました。(→国土地理院)
これは一般的に「旧日本測地系」と呼ばれることが多く、GISの空間参照システムでは「Tokyo~」で示されています。
問題なのは、この昭和59年に作られた地籍図の座標の測地系はTokyoのままなのか、JGD2000に変換されたものなのか?ということです。
そこでネットで色々調べてみたのですが、結局分かりませんでしたw
試しに両方ジオリファレンスしてみたら、Tokyoは大きくずれて、JGD2000はほぼ合致。
地図にもよるでしょうが、2000年以前に作られた地籍図でもその座標はJGD2000に変換されていることが多い、のかもしれません。

 

ジオリファレンス

ジオリファレンス(Georeference)はそのまま日本語にすると「地理参照」となりますが、GIS的には「投影法や座標の無いデータに、それらのデータを組み込む作業」なんかを言います。
古地図やスキャンした紙地図はただの画像データですが、それらをGISデータにして他の地図データと重ね合わせて解析することが出来るようになるのです。

フリーソフトのQGISを使って、早速地籍図をジオリファレンスしてみましょう。

方法

地籍図は基本的にデータとしてはくれないので、まずは紙地図をスキャンします。
スキャナーは持ってないのでコンビニで行いました。
地籍図は申請すれば誰でも閲覧出来るらしいのにどうしてネット上で公開したりGISデータ配布しないのかな?かな?
どうせジオリファレンスするので、スキャンするときに上下左右がきっかり合ってなくても大丈夫です。
ソフトが傾きを自動補正してくれます。

QGISでジオリファレンスするにはプラグインのGDALジオリファレンサーを有効にする必要があるようですが、有効になっているのにどこから起動するのかわからず時間食いました。
色々やってようやく、上のツールバーで右クリックして「ラスタツールバー」を表示、その中に「ジオリファレンサー」があることに気づきました。

 

起動すると別のウィンドウとなります。
「ラスタを開く」でスキャンした地図を開き、「JGD2000/Japan Rectangular CS 〇」でこれから与える座標値の測地系を規定。(〇は地積図下側のローマ数字)

ジオリファレンスでは基本的に、画像データのいくつかの点にその測地系に合った正しい座標を与え、一気に変換することで画像データ全体に座標データを与えるという流れとなります。
ですので基準となる点は、多いほうが良いし、画像データの端から端をカバーできたほうが良い、というわけですね。

自分の場合、地籍図の右上と左下に座標があったのでこれを利用です。
右下と左上には座標が載ってありませんでしたが、まあおそらく右上と左下の座標をそのまま利用できるものなのでしょう。
例えば右下なら右上のX座標を、左下のY座標を入力。左上も同じく。
これで地図を囲む4点に座標を与えることが出来ました。
変換する際には色々設定が出来ますが、平面を球面にするなど難しい変換する必要は無いので、サイズと傾きの調整だけで済みそうな単純な「線形」で良いんじゃないでしょうか?
なおジオリファレンスの処理方法の詳細はArcGISのオンラインマニュアルが一番網羅的かも。
設定で出力ファイル名変えたり出来ます。

準備が整ったら左上の「再生ボタン」?を押してジオリファレンス開始!
上手くいけば他のデータと重ね合わせられるはずです。

試しに「道路縁」と「5m等高線」と重ね合わせてみましたが、ぴったり重ね合わせることが出来たかというと、正直判別出来ないですw
5m等高線的には地籍図に載ってる道と合ってそうですが、「道路縁」とは合ってない。
しかしこの道路縁自体が精度低いような気もするんですよね。
山林の中だからだろうけど。
かと言って山林だから道路以外の基準点もありませんから、う~ん、まあこれでいいか。

 

境界データの作成

欲しいのは境界線ですが、今のままでは画像データでしかないので重ね合わせがやりにくく見づらいのです。
なのでどうにかしてこのラスタデータをベクタポリゴン(面)データに変換しようとしたのですが、「ラスタ→ベクタ変換」などやってもなかなかうまくいきませんでした。

ラスタデータをそのままベクタデータに変換すると上の画像のようになり、綺麗なポリゴンデータを作るのはかなり難しそうに思えました。
変換前のラスタをもう少し補間するなどすれば良さそうだと思って色々やってみましたが、エラーばかり…。
多くの地図を自動でGISデータ化するならまだしも、今回は自分だけのデータが欲しいので、諦めてフリーハンドでベクターポリゴンデータを作っていくことにしました…。

メニューの「レイヤ」から「レイヤの作成」→「新規シェープファイルレイヤ」
タイプは「ポリゴン」にして名前決めると入れ物が完成です。
左のレイヤパネルから右クリックして「編集モード切替」で実際にポリゴンを作れるようになります。

上のリボンにある「地物の追加」から点を追加していけます。
左クリックで点を追加していき、右クリックで終了。キャンセルすると努力が泡となる。
これだけで一気に作成してもいいけど、番地一つ一つやっていったほうがミスも少ないかも。

ただしその場合考慮すべきなのは、既に作成したポリゴンデータの点や線と上手く結合できるかどうか。
自分の場合デフォルトの設定ではノード(基準点)の場所をクリックしても微妙にずれました。近くをクリックしたら「基準点と一致させたいのだな」というように認識してほしい。
そこで必要な設定が、「スナップ」というもの。
メニュー「設定」→「スナップオプション」で許容範囲を変えることで既存のデータの点や線の近くをクリックするだけで合わせてくれるようになります。
これではみ出しや隙間の無いデータが作れます。

番地毎の境界データをフリーハンドで作成しました。
このまま使ってもいいのですが、自分の土地ですから番地毎の境界は今のところ必要ありません。
そこで、「dissolve(融合)」を行って内側の境界線を無くします。
方法はメニューの「ベクタ」→「空間演算ツール」→「Dissolve」で入力レイヤ入力するだけでオッケーです。
ちゃんとスナップ出来てたり各番地の土地と土地の間に隙間が無ければ綺麗な境界線が出来るかと思います。

 

これで境界線データ完成です!

中央左にある隙間は地籍図によると「道」のようですが、現地に行ってもそれらしきものは見当たりませんでした。
明治以前に使われていたようなものでしょうか。

 

では最終目的の地形データと重ね合わせて、私の山林開拓状況をご紹介しましょうか。

境界線、5m等高線、傾斜、道路縁データを重ね合わせた地図です。
道路縁と敷地が離れているように見えますが、地積図ではちゃんと接しています。

伐採完了2,000㎡ほど。
残り14,000㎡。
小屋から東側は伐採完了しましたが、西側は手付かずです。
こうやって見れば、開拓はまだまだですね。

南向き斜面は乾燥に強い陽樹的なものなら育てられそうです。
中央左の谷は少し平坦になってますから、何かしら施設的なものを作るか、水が多いからジメジメしたところで育つものを作るか。
南西にある急傾斜な北向き斜面、何に使おうかな…。

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